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教室長を目指すために20代のうちに磨きたい3つの力【キャリアコラム#83】

 

こんにちは。講師の木村です。

集団指導塾でも個別指導塾でも、塾でキャリアアップするとなると「教室長」を目指していくことになります。

塾によって校長・校舎長・教育プランナーなど呼び方は様々ですが、求められる役割は同様です。今回は、教室運営を担う教室長になるために必要な力を3つの点に分けてお話ししていきます。

目次
「面談力」を磨く
「教務力」を磨く
「経営的観点」を磨く
まとめ

 

「面談力」を磨く

1、聞く力の重要性

塾の教室で、教室長と講師などのスタッフの最も大きな違いは、生徒対応だけでなく保護者対応の比率が上がることです。新規入会希望者や保護者との定期面談、トラブルが発生したときの面談は教室責任者である教室長の役割です。

また、面談のみならず電話でのコミュニケーションが求められるほか、最近はLINEなどのSNSを連絡ツールとする塾も増えてきました。それぞれの場合で共通して求められるコミュニケーションのポイントは、ズバリ「聞く力」です。

教室長に就任して最初の問い合わせが来ると「いよいよ来たな!」というワクワク感と、「うまくいかなかったらどうしよう」という緊張感があります。筆者も数多の入塾面談を行ってきましたが、一番最初の面談の緊張感は昨日のことのように覚えています。そういう時にどのような行動を取るかというと、塾の説明に必死になってしまうのです。それぞれの塾で研修時に教わった内容をそのまま実践しようとするのは間違いではないのですが、面談は相手があって成り立つものです。

ここで大事なことは、生徒や保護者の悩みを聞く姿勢です。

生徒ごとに多様な悩みを抱えています。勉強と部活の両立、勉強方法が分からない、勉強しているのに成績が上がらない…など、どういった点に悩んでいるのかを聞くことが最優先です。

話している生徒・保護者の目を見るのは当然のことですが、生徒が話しているときは少し生徒側に、保護者が話しているときは保護者側に身体を向けることも聞く姿勢を表すことになります。

また、生徒の悩みと保護者の悩みが違うケースも面談中には多々あります。うまく共感をしていくことが大切ですが、共感と同意の区別をつけておかないといけません。

共感は一人の人間として話し手(生徒や保護者)の気持ちを理解しようとすることで、同意は相手の意見に賛意を示すことです。後者の場合、価値判断を含むことになってしまうため、相談内容によっては学校の先生を否定してしまうリスクがあります。したがって、相槌を打ったり「その気持ちわかりますよ」などと言ったりすることは効果がありますが、状況によっては気を付けないといけません。

そうして悩みを伝えてもらった際に、それぞれに合った解決プランを即時に示すことができると、生徒や保護者からの信頼が得られます。それを示すために、できるだけ多くのパターンの生徒の指導を行うこと、同僚の先生とのコミュニケーションを通じて自分以外の視点を得ておくことが重要です。

特に教育に関しては、一人一人が経験してきたことを基に自分視点で話してしまいがちです。そこで、別の講師の考え方を持っておくことで話の引き出しを増やすことができます。

2、性格分析の活用

生徒の性格に合わせて話し方を変えられるといいでしょう。そのために、心理学の入門書を読むなどして「エニアグラム」を学んでおくと面談時に役立ちます。

これは、人間の性格を9つに分類したもので、自己分析と他者理解につながります。簡易的なものであっても性格分析できるようになると、面談時に「どのような言葉をかけてあげるのがいいのか」が分かります。

一つ例を出すと、比較的慎重な性格の生徒が相手の場合は、これからの学習スケジュールを丁寧に説明して上げるほうが安心してくれます。なぜこのように勉強を進めるのがよいのか、志望校に合格するためには何が一番大事なのかを伝えてあげるのです。

一方、気分屋の生徒にはあまり堅実なスケジュール管理の手法は効果が見込まれません。逆に「○○ができるようになったらすごいよ!」とか「△△高校の文化祭はめっちゃ盛り上がるから楽しいよ」といった感情に訴えるアプローチが効果的です。

このようにして、生徒の性格ごとにアドバイスできるようになると、一気に信頼を勝ち取り、ひいては他塾との差別化が図れるのです。

参考:日本エニアグラム学会 各タイプの特徴 | 日本エニアグラム学会 (enneagram.ne.jp)

 

「教務力」を磨く

講師の場合は、自分が担当する科目についての指導力を高めることが求められ、教材研究や指導法研究、そして入試問題研究といったことを日々行っていると思います。

では、教室長になるとどうでしょうか。講師と全く同じでいいのでしょうか。

指導科目以外の知識を増やしていく

ズバリ言ってしまうと、全科目に対する知識が求められます

すなわち、自分の得意科目のみならず、文系の先生でも数学や理科、理系の先生でも国語や社会に関する知識が求められるのです。中学受験や高校受験を対象とする塾であっても、大学受験の動向は知っておかないと面談の際に「この人は先を見据えた指導をしてくれないのでは?」と疑念を持たれかねません。

ここで学んでいただきたいのは、決して各科目の専門知識ではありません。ましてや、全科目の質問対応ができることを意味しません。物理を履修したことのない英語の先生が「運動方程式」を理解しておく必要はないのです。

しかし、「高校物理には力学・電気・波・原子などの分野があり、力学が中心的である。力学の勉強を始めるには数学でベクトルを学んでからのほうが望ましい。」くらいの認識は必要になるのです。さらに、大学の学部に関しても、各学部の概要くらいは文理問わず説明できるようになる必要があります。(詳細は生徒本人に調べてもらって差し支えありません。)

一つ例を出してみます。大学受験を見据えた高校1年生の入塾面談で「文理選択をどうしようか悩んでいます」という相談があったとします。これに対してどう答えるでしょうか。あまりよくない回答は「自分は経営学部だったけどマーケティングは楽しいよ」というような、自己の経験のみに基づくものです。下手をすると、自己の価値観を押し付けてしまうことになりかねません。こういうときに、多様な科目の特徴や具体的な文系学部及び理系学部の話をして、選択肢を示してあげると信頼、つまりは入塾につながる可能性を高めることができます。

今後は学習管理が求められる

YouTubeやインターネット、SNSを通じて多様な情報が得られるようになった現代では、塾に求められるのは学習指導(授業)だけではありません。勉強法や学習進捗管理も塾の役割の一つです。

近年、武田塾に代表されるような学習管理型学習塾が増えてきていますが、その影響もあって、大手予備校の河合塾は2023年度より「完全習得タイム」という進捗管理に近いサービスを開始しました。

これからの学習塾業界では、集団授業・個別指導の形態を問わず、生徒の学習状況に応じたアドバイスをすることが重要になります。学習の進捗管理を行うには、自分の担当科目についてのみ知っていても不可能です。

例えば、大学受験を目指す塾に務めるA先生の担当科目が「社会」としましょう。A先生は社会のエキスパートで、高校入門レベルから早慶レベルまで指導可能ですが、社会以外の科目のことをあまり知らないとします。では、A先生のようなタイプは学習管理ができるでしょうか。正直言って、難しいでしょう。仮に生徒が私立文系大学志望ならなんとかできるかもしれませんが、理系の生徒の学習管理はほとんど不可能に近いでしょう。

ぜひ今のうちから、ご自身の指導可能科目以外の幅広い知識を深めていきましょう


「経営的観点」を磨く

教室長はマネジメント力が必要になります。

生徒指導だけではなく、講師やスタッフの採用・研修・シフト管理を行うことも業務のうちです。初めて部下を持つ経験をされる方はカーネギーの『人を動かす』のようなビジネス書を月1冊読むといった目標を立てるのもいでしょう。

加えて、備品管理や売上管理といったことも仕事になります。講師の立場ではあまり考えないことかもしれませんが、教室運営を担う教室長には必須の知識です。

労務管理に強くなる

なかでも、労務管理についての知識は必須でしょう。

教室長としてまとめていくには、講師やスタッフの方が働きやすい環境を整える必要があります。そのためにも、労働基準法などの労働法規を早期から学んでいくべきです。もし運営している教室が違法な労働環境であった場合、責任を問われてしまいかねないのです。

制度的な問題に加えて、心理的配慮も必要となります。以前と比べて、精神疾患で休退職する人が増えていると指摘されます。大切な仲間である講師やスタッフが就業困難となる前に、適度な休息を取ってもらうのも教室長の役割です。講師やスタッフの表情や言動から疲れを見抜き、一声かけるだけでも十分に効果がありますが、それを実行するためには日ごろからのコミュニケーションが必要なのは言うまでもありません。

飲み会に代表される勤務時間外のコミュニケーションは、快く思う人とそうではない人に分かれるので慎重に進めないといけませんが、これを強制参加としてしまうと、パワハラと判断されるケースがありますので、気を付けてくださいね。

参考記事:「これ残業ですか?」飲み会・接待・ゴルフの「違法性」を弁護士が解説(ニューズウィーク日本版) - Yahoo!ニュース

売上を上げるために

もう一つ、教室長として重要なのが売上管理です。

塾はあくまで民間企業であるので、売上を上げることができなければ会社の存続が難しくなり、教室長はもちろん、講師やスタッフを守ることができなくなります。そして、それは生徒を守れなくなることも意味します。

適切な売上を出すことで、教室がうまく回るのです。売上向上のために教室長の果たす役割は塾・会社によって大きく異なります。広告宣伝や新規開校までゆだねられる塾・会社も実際には存在します。

教室長になる前に準備できることとしては、既に述べてきた力を付けていくことが挙げられます。生徒・保護者と塾の双方とってwin-winの提案をできるようにするために必要なのが、まさにここまで述べてきた「面談力」と「教務力」です。これらを武器にして説得力のある提案を行うことができれば、生徒の学習がうまく運び、保護者からは納得してお金をいただくことができ、講師やスタッフは良好な環境で指導に当たることができます。教室長の仕事は、そういった環境を整えることともいえるでしょう。

 

まとめ

教室長を担うということは、講師とは違った役割を果たすことです。上記のいずれかが欠けていてもうまくいかないでしょう。

教室長になってから焦ることのないように、早い段階から「面談力」「教務力」「経営的観点」の3つを伸ばしていってください。

このように聞くと、教室長って大変そう…と思われるかもしれませんが、一人の講師とは違ったやりがい、面白さがあります。ぜひお読みいただいた方が教室長としてご活躍される日が来ることを期待しております!

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塾講師ステーション情報局 編集部

記事執筆者:塾講師ステーション情報局 編集部

塾講師ステーション情報局上の記事の企画・執筆・編集をしています。
年100本以上の記事を執筆する有識者や塾バイト経験者をはじめとする、塾講師業界に関するエキスパート集団です。

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