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個別塾講師がすべき過去問指導法とは?【キャリアコラム#107】

こんにちは、講師の木村です。

2学期に入り、大学受験を目指す生徒の中には過去問演習を開始することも出てくる時期です。高校受験の生徒でも、年末にかけてそういった状況の生徒が増えてくると考えられます。

そこで本稿では、特に個別指導塾において、今の時期から講師に伝えておくべき「過去問演習での注意点」をまとめてみました。

本格的な過去問演習シーズン到来前に、講師研修等を通じて、教室内の講師と認識を合わせておくことが重要になります。よければ最後までお読みください。

目次
過去問演習をはじめる前に
過去問演習の進め方
指導の際の注意点
復習時での指示
終わりに

 

過去問演習をはじめる前に

過去問演習はあくまでも「仕上げ」の段階です。

基礎力がない時点で過去問演習を繰り返したところで、効果はほぼありません。受験までの残り日数から過去問の開始時期を決めるのではなく、現状の生徒の学力状況から計画を考える必要があります。

基礎定着が最優先

例としてよく挙げられるのが英単語の暗記です。

大学受験用の『ターゲット1900』や『システム英単語』を覚えていない…という状況では、過去問演習は夢のまた夢です。しかし、生徒の志望校を考えたときに、果たして本当に全て覚えることが必要でしょうか?

また、一通りの英単語の意味が答えられればそれで「覚えた」と言えるのでしょうか?まずは、最低限覚えるべき部分を示し、優先的に覚えるよう指示を出しましょう。なお、どこまでのレベルの英単語が必要なのかを確かめるために、一度過去問を解いてみるという使い方であれば、比較的早い段階に取り組んでもらってもいいでしょう。

ですが、そうでない限りは基礎の徹底こそが受験合格の肝であることは言うまでもありません。

英語であれば英単語・英文法・英文解釈、数学であれば教科書レベルの例題・計算力、国語なら漢字・語彙・古文単語がまだ完成していない状況では、たとえ過去問演習期といえども、それ以前の内容を早急に取り組ませるべきです。

いきなり志望校の過去問を解くのか

この点については、人によって考えがあると思います。

私の指導経験からすると、慎重に事を進めたいタイプの子には、志望校から2レベル落とした問題から取り組んでもらうほうが効果的です。MARCHを志望する場合なら、日東駒専くらいが相当でしょう。このタイプの生徒は、「できない不安」を感じやすいため、問題レベルを徐々に挙げていく方向の方が好ましいと思われます。

一方、性格的にイケイケタイプであるならば、志望校のレベルに近い問題に取り組ませ、そこで出た弱点を補強していく方向のほうがうまく回る可能性があります。

このように、生徒ごとに対応を変えられるのが個別指導塾の長所で、それが最大限発揮できるのがこの過去問演習シーズンといえるでしょう。

 

過去問演習の進め方

一回目から「制限時間内に解き切れなかったら終了」という形で進めるケースは多いと思いますが、最初から過去問レベルの問題を制限時間内に解き切ることのできる生徒はまず多くありません。そこで、次のようにしてみることをおススメします。

最初は通常通り制限時間内に挑戦しますが、制限時間になったとしても、全ての問題を解き切るまでは継続して行います。その時に、何分追加でかかったかを記録してもらいます。そして、追加時間内で回答する問題は、黒字以外で記述してもらってください。

制限時間に関しては

)2023年度同志社大学全学部日程 国語 85分(制限時間+10分)

という形で記録してもらうとよいでしょう。

制限時間+5分以上かかる状態であれば、この形式で進めてもらってください。

生徒は「時間内に終わらないといけない」思いが強く、適当に取り組んだり、最後まで解き切れないまま解答を見てしまったりします。それはできるだけ避けましょう。時間がかかったとしても、自分なりの解答を出してもらうことが重要です。

 

指導の際の注意点

過去問を解いてもらった後に実際に授業を行うと思いますが、個別指導でやってしまいがちなのは、講師側から「どこが解けなかったか?」と聞き、それに対して生徒が「間違えた問題」の解説を聞くというパターンです。

これでは、受身的な授業になってしまうとともに、生徒には自分で間違えた問題を自力で解決しようとせず、講師に質問してしまえば楽に教えてもらえると思われてしまいます。

では、どのように過去問指導を行うべきでしょうか。個別指導塾の指導形態によりますので、3つのケースに分けてお話しします。

授業時間に合わせて過去問を解いてもらったケース

これは制限時間内に解き切れるかどうかという実践的な形式で演習を行うパターンです。

この場合、まずは試験時間内に解き切れる基礎力が身についているのが最低条件といえます。

解き切れていない問題については宿題とし、その場で解説してしまうことは避けたいところです。間違えてしまった問題に対して「なぜ間違えたのか」を検証することに力点を置きましょう。復習が必要な単元や、解法を忘れてしまっている内容がある場合は、類題演習を宿題として提示します。

あくまでも講師の役割は解説することではなく、今後の勉強のポイントを発見してあげることにあることが重要です。問題の解説は生徒自身に赤本の解説を読んでもらい、それでもない解決不能な部分のみ補足する形が好ましいです。

一つ注意すべき点は、偏差値50以下の大学の赤本の場合、解答のみが掲載されて解説が付されていない場合があります。

この場合は、その場で対応することが求められてしまいます。すぐに解説することが困難な場合には「次回までに調べてくること」を約束して保留しましょう。その場で何分も悩んでしまっては時間の無駄になってしまいます。

授業時間内に過去問を解いてもらうケース

授業時間内に過去問を解かせるのはかなり時間を要するため、あまり推奨しませんが、形式としては考えられるでしょう。

このとき、一つの大問だけを解いてもらうことが考えられますが、必ず時間の計測をしてください。そして、問題に対して生徒がどういう風に解いているかを観察しましょう。例えば、数学の問題で計算式を書いては消すことを何度も繰り返している場合は、問題を見たときに指針を考えることなく、思い付きで手を動かしている可能性が考えられるのです。

このように、生徒の癖を見抜くことができるのが授業内演習のメリットですので、それを最大限に生かしましょう。

課題(宿題)として過去問演習を行ってきてもらったケース

この場合に関しては、次のパートでお伝えする復習のポイントまで行ってきてもらってください。そして、生徒自身の分析が妥当か否かを判断するのが講師の役割となります。必要に応じて改善点をアドバイスしてあげるとよいでしょう。そのときに、自分の体験談を伝えても構いませんが、あくまで一例として話しましょう。できれば、実際の生徒のパターンを知ってもらえると指導の幅が広がるでしょう。

 

復習時での指示

過去問を解いた後に解きっぱなしで次の問題演習をする子は例年必ずと言っていいくらいに存在します。これでは、過去問演習をした意味がありません。

過去問を解いた際には、以下の三点を整理・分析してもらいましょう。そのとき、口頭で聞くだけだとどうしても記憶頼みになってしまうため、紙に書きだしたりLINEで送ってもらったり、「記録」を取ってもらうことが重要です。記録がなければ追検証することができなくなってしまいます。

できたこと

これまでの問題演習や基礎内容の勉強が活かされた点、そして前回の過去問演習の改善点が活きた部分などを具体的に言語化してもらいます

過去問演習のみならず、模試の復習のときでもそうですが、課題点をたくさん挙げてしまってモチベーションを下げてしまう子がいます。そのため、まずは「自分なりにできたと思ったこと」から書き出してもらいましょう。 

現状の課題点

「できたこと」が書き出せれば、次は課題点を整理してもらいます。

ただし、全ての問題の間違えた原因を一つ一つ課題点としてしまうと、収拾がつかなくなります。そのため、課題点の個数は「できたこと」の数と同じ数だけにとどめてもらいましょう。

課題点として「ケアレスミス」と書いてしまう生徒には要注意です。この場合、自分で犯したミスの種類が分類できていません。そこで、その「ケアレスミス」というものは一体何なのかを明確にしてもらうことが肝要です。(例→問題文をよく読み、選択しないといけないものが本文内容と合致しているものなのか、あるいは合致していないものなのかに線を引く!)

今後の勉強で必要なこと

最後に、②で整理した課題点を基に、今後の勉強で力点を置くことを書き出してもらいます

例えば、英語長文の読解速度に課題を感じる生徒であれば「難易度が易しめの英文での音読練習を毎日1題行う」といった内容が挙げられるでしょう。

この点は生徒本人だけで考えるのは少し難しいかもしれませんので、必要に応じて講師がサポートしてあげることが必要です。

 

終わりに

塾講師にとって過去問のみならず、各問題の解説こそが腕の見せ所と思われがちですが、特に個別指導の場合は必ずしもそうとは限りません。「教えすぎ」は生徒自身の甘えに繋がります。生徒に対して過去問演習を通じてどういうことをしてもらいたいかを明確に伝えないと、せっかくの過去問演習の効果が薄れてしまいます。

本格的に過去問演習をしてもらう前に、今一度本稿を参考にして、過去問演習の際の指導ポイントを整理してみてください。そして、担当されている生徒の合格に繋げてあげてください!

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記事執筆者:木村将大

大学生時代に個別指導塾で講師として勤務し始め、その後複数の大手個別指導塾で講師・教室長を歴任してきました。現在はフリーランスの講師として活動中です。会社員時代は、社員やアルバイトの非常勤講師の採用・研修にも携わっていました。講師として指導者目線と、マネージャーとしての経営的視線を併せ持ち、双方がやりやすい環境整備をすることが重要と考えております。

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