原子価軌道法について
原子は物質のこれ以上分割できない最小単位として1803年ドルトンが想定し、それによって彼は質量保存の法則や定比例の法則を示そうとした。
結果として彼の試み自体は間違っていたわけだが、実際に原子の考え方は現在まで生き続けている。
原子価軌道について説明します。
かつて物理学者ラザーフォードは、電子が原子の周りを軌道上に回っていると考えると、原子が飛び飛びのエネルギーを取ることが説明できると考えました。彼は内側の軌道から順にs軌道、P軌道、d軌道、F軌道…と名付け軌道ごとに取るエネルギーが異なり、それは波長の整数倍に比例するとしたのです。
この軌道を原子価軌道と呼びます。
s、P、d、F軌道は各々K、L、M、N殻に相当するので、今まで殻として考えてきたものが軌道だと考えると分かりやすいです。
さてこの軌道に電子はどのように入っていくのでしょうか?まずスピンにつぃて説明します。
スピンとは?
ある元素から出た光は対応するエネルギーとして特有の波長をもっています。これを観察することで遠く離れたところにある天体がどのような物質を持っているかがわかります。これを調べる手法をスペクトル分析といい各々対応する波長をフラウンホーファー線と呼びます。
Naから出た光の波長を調べていくと、そのNaが持つエネルギーごとに出て来る光のエネルギーは変わってくるのですが、エネルギーを挙げたときあるところからNaのフラウンホーファー線が2つに分裂してしまう現象が確認されました。
この現象を説明するためにパウリは電子には右回転と左回転で区別が生じ、この分裂現象は回転回りの違いから生まれると考えました。
実際にこのように考えるとうまくいきました。つまりスピンとは原子核を回る電子の回転方向を表します。
どのようなルールで電子は軌道に入っていくのか?
これには3点のルールがあります。
- 構成原理
- パウリの排他律
- フントの法則
1、構成原理
これは電子はエネルギーの小さい軌道から収納されていくというルールです。
ただ同じ軌道内でも電子雲の取る形によりエネルギーが変わり得るので単純に外側の方がエネルギーが大きいということにはならないのが注意です。
2、パウリの排他律
1つの軌道に収容される電子は2つまでであり、同じ軌道上の電子は互いに右左の位相を持ち、同方向位相には収容されない。
3,フントの法則
同じエネルギーの軌道が複数ある時、電子は同じ軌道に入るよりも互いに異なる軌道に平行に入った方がクーロン反発が少なくなるためより安定な状態になる。
用語説明
電子雲とは?
原子において電子を存在する確率で表したもので、空間における電子の相互作用が起きる確率は雲のようなぼんやりとした分布になるので、それを電子雲と呼びエネルギーの状態や位相を議論する際に視覚的に用いる。
位相とは?
電子は粒子のようなイメージで捉えている人も多いかもしれませんが、実際に原子に収容されているときは波のイメージで波長の整数倍のエネルギーをとり各軌道のエネルギーは飛び飛びの値を取る。波には位相が存在し簡単に言えば波の起伏がどのような順番でくるのかということです。山と山が重なれば強めあい、山と谷とが重なれば弱め合う。
まとめ
軌道の概念を使うことでこれまでの反応がより理論的に考えられるようになります。
しかし、話がどうしても抽象的になりがちなのでその時は具体的な種類の原子にあてはめて考えると分かり易いでしょう。