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【高校化学】化学反応の色を理論部分から説明してみる。

高校生

2021/12/17

 高校化学の色を理論面から考えてみる。

今回紹介する色は以下の4つです。

  • 植物の葉の色はどうして緑色なのだろうか?
  • フェノールフタレインはどうしてアルカリに対して赤紫色に反応するのか?
  • 過マンガン酸イオンはどうして赤紫色なのか?
  • フォトクロミズムはどういう原理?

についてご紹介したいと思います。

植物の葉の色はどうして緑色なのか?

植物の葉の色が緑色なのはクロロフィルという植物に含まれている色素が原因です。

クロロフィルは光に当たると、通常の原子軌道よりもより外側のエネルギー状態が大きい軌道に励起され、その際に吸収したエネルギーに当たる波長をもつ光がクロロフィルに吸収され、その波長の光が反射されなくなります。この場合は赤色の波長をもつ光が吸収されるためにその補色である緑色に葉が見えるという理屈です。また植物に含まれるクロロフィルムは光合成をおこなう場でもあるため励起したエネルギーはすぐに光エネルギーとして光合成の反応に利用される。動物体内に含むミトコンドリアやクロロフィルは独自の核膜をもつため、元はこれらを含む生物とは別の種であり進化の過程を経て共に生物に取り込まれたと考えらえている。

フェノールフタレインはどうしてアルカリに対して赤紫色に反応するのか?

フェノールフタレイン分子は環状エステル構造をとり、エステル基と3つのベンゼン環と結びついている中心の炭素原子は正四面体構造をとり、sp3混成軌道をとっているためHOMOとLUMOという軌道上に配置される電子の位相の正負におけるエネルギー差が可視光線のエネルギーよりも高く、人の目には変化が見られない。

一方で塩基性化では2個のフェノールのヒドロキシ基から水素2個が引き離され環が開裂して陰イオンが生成される。中央の炭素原子は平面三方構造(sp2混成軌道)をとりπ(パイ)電子が分子全体に非局在化される。そのためにHOMOとLUMOとのエネルギー差が減少し、エネルギー差が可視光のエネルギーに相当するようになる。つまり、緑色に見える波長の光エネルギー差となっており、このエネルギーを吸収つまり緑色に見える光を吸収するためその補色としての赤色が目にみえるようになる。

混成軌道の見分け方

主な混成軌道はsp1、sp2、sp3混成軌道でありこれらの軌道の見分け方について紹介する。

構造式で考えたとき、sp1混成軌道は2原子分子同士の直線形、sp2混成軌道は平面三方構造、sp3混成軌道は正四面体構造をとる。これらの軌道の考え方を使うと「各部分に結合する確率は数学的には等しいはずなのに、実際の化学反応の結果できる物質は一部の部分にしか結合しておらず、結合のしやすさに違いがみられる」理由も実は各部分の結合エネルギーを考えたときに最大となる部分により結合しやすくなる事がわかり大変有用である。これを発見した福井さんらはノーベル生理医学賞を受賞している。 

パイ電子の非局在化とは?

高校化学ではあまり触れないが、共有結合には2種類そんざいして、各々π結合、シグマ結合という。

π結合とは電子雲が重ならずに直交しているときである。シグマ結合は電子雲が重なっておりπ結合よりも強い結合である。このぱい結合が非局在化するとは分子全体にパイ結合が広がり、どれか一つの結合だけでなく分子全体での結合が形成されることを表しており、共鳴エネルギーの分のエネルギーが減少する。

HOMOとLUMOとは?

原子に配列される電子には位相があり各電子の位相の違いにより同じ電子数でも分子軌道のエネルギーが異なる。その中で最も高いエネルギーを持つ位相を最高被占軌道HOMOといい、最も低い位相を最低被軌道LUMOといい、結合が変化するとこの間のエネルギー差が変化する。

過マンガン酸イオンはどうして赤紫色なのか?

過マンガン酸イオンのマンガンイオンの価数は+7であり3d軌道は空洞であることから配位子の軌道はエネルギー状態が高くなるために、より安定化するために配位子の軌道から金属イオンのd軌道に電荷が移動する。そのためにd軌道に電荷が配置されHOMOとLUMOとのエネルギー差が可視光の緑色の光のエネルギーと一致し緑の光を吸収してその他の光は透過して、励起された状態になり、補色として赤色っぽい色が見えるのである。

フォトクロミズムはどういう原理?

皆さんはフォトクロミズムについてご存知でしょうか?

フォトクロミズムとは光によって色が可逆的に変化する現象のことを言います。

この現象は、調光機能サングラスに使われている。基本的に電子環状反応という化学反応が原因である。環状となっている当該物質に紫外線などの光エネルギーが当たると、閉環構造をとっていた物質が開環構造に変化してパイ電子が非局在化つまり分子全体に広がるために、エネルギー状態が低下し可視光のエネルギーを吸収するようになり、結果その補色としての色が見えるということである。フォトクロミズムを示す化合物としてはスピロピランやジアリールエテン、フルギドなどが挙げられる。

まとめ

このように身近な現象の中に科学の不思議は詰まっていることを示してみるとまた一段と面白く思えるかもしれません。これ以外にもそのような現象はたくさんあるので是非探してみてください。

 

 

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