勉強法の本質的な問題:質か、量か?
勉強を始めようと思ったとき、または勉強をしていて思うこととして、勉強は量を求めてやっていくべきなのか、もしくは効率よく質を求めて勉強していくべきなのか…ふとそう考えることはあるのではないでしょうか。特に受験生となると、勉強の仕方によって将来も決まってくるという大事な時期であり、なかなか自分自身で勉強を進めるのは不安になってくるものです。私も勉強をしていてこのような方法で本当にいいのだろうか…と感じていたときも多々ありました。
今回は勉強の取り組み方、それも量なのか、質なのかについて深く伝えていきたいと思うと同時に、今後生徒たちの勉強をお世話していく講師たちの参考になればと思っています。
最初は量を重視した勉強を
勉強をしようとなった時にいきなり質を求めて勉強しよう!というのはなかなか酷なことです。何もわかっていない状況でいきなり効率良く勉強できるのはなかなか難しいことです。
だから、まずはできるだけ勉強量を増やせるだけ増やしましょう。生徒自身ができる勉強量の限界を知っていることはとても大切です。学校で配られたプリントの問題を解いたり、生徒にある問題集を渡したり買わせたりなどをして、それを1からコツコツ解いてみたりといったように、まずは生徒自身から行動をおこして勉強をする姿勢を身につけるようにしましょう。数学だったら問題集を買って実際に解いてみるだったり、英語だったら単語集や熟語集を買って1から覚えてみたりということです。勉強量を増やして勉強をしていくことによって、自分に必要なもの、不必要なものをある程度生徒にわかってもらえるようにするのが大切なのです。
とにかく量をこなして自分に何が必要なのかがわからないと、質がどうこうという問題にならないということです。効率良くやる以前に、何が効率悪いのかわかっていないと、何が効率良いかわからないものです。
質のある勉強を考える時とは
先ほども示した通り、まずは量を重視した勉強、すなわちひたすらに勉強をしようということを述べましたが、では質のある勉強を求めるときはどういう時なのでしょうか。
一つ目として、量をこなして勉強しているのに成績が上がらないとき。
勉強量を増やしてがむしゃらに勉強をしているのに、模試の成績が上がらない、むしろ下がってきているというときは生徒の勉強法を見直さなければなりません。何を見直さなければならないのかというと、まずは方向性が合っているかどうかということです。これはどういうことかというと、自分が実際に行っている勉強が生徒の目標に向かっているのかどうか、ということです。ただ量をこなしていても、自分の必要のない分野を無駄に解いたりしていては意味はないし、時間の無駄になってしまいます。
なので、生徒の模試の成績や学校の試験の成績を常にチェックすることが大事になってきます。全体的な成績はもちろん、特にどの分野ができていてどの分野ができていないかをしっかり講師が理解して、生徒に伝えて、苦手分野を重視した勉強をするといったような、これまでやってきた勉強法を少しずつ変えていかなければなりません。
二つ目として、勉強をする時間が限られているとき
これは特に受験生にいえるのではないかと思います。部活を受験前までやって、受験までもう時間がないというケースもよくあります。1日24時間という物理的に決まられている時間の中でやらなければならないのです。時間がないなかで、とにかく本番までがむしゃらに勉強をするというのももちろん大切ではあるのですが、その勉強の方向性が間違っていると、実際何も身につかないまま本番を迎えることになってしまうこともあります。今までの模試や学校の試験を見直して、今一番生徒が苦手としている分野から順番につぶしていて、なるべくその苦手なところをなくせるようにといったようなことをしていかなければならないということです。
受験生の実際の受験日までの日数を計算して、その日数の中で苦手分野をどのくらいつぶすことができるのかを、少しでも講師が把握して、大幅な計画を立て、そして月ごとの目標を設定してあげて、生徒自身が目標を持って勉強ができるようにしてあげることが大切になってきます。
三つ目として、生徒が勉強の不必要・必要な部分を把握できるようになってきたとき
量をこなして勉強をしてくると、だんだん自分に何を身につける必要があるのか、またはもうこの部分はやる必要がないというようなことがわかってくると思います。そうしてさらに自分の勉強を良くしていきたいときに、その生徒に必要な部分の勉強を中心に進めていくといったように、勉強も自分なりに工夫して取り組むことによって、勉強の質も上がってくるでしょう。
ただひたすらに勉強の量を増やして長期間勉強させるのはなかなか酷なことですし、生徒も勉強に嫌気がさしてしまいます。ある程度勉強する癖がついてきたように感じましたら、生徒に実際にどの部分が得意不得意かを尋ねるようにしましょう。そういったコミュニケーションをもとに少しずつ勉強の焦点を変えていきましょう。
質のある勉強とは
では、質のある勉強とは一体どういう勉強なのかということです。どの内容を勉強するのにもいえるのですが、質のある勉強というのはその分野の本質・核となる部分を中心に理解してから、その知識を基にさらに勉強の幅を広げていく、ということです。次の事柄を参考にしてもらいたいです。
例えば暗記の仕方があります。歴史を覚えるときも、ただ人物とその人がやったことを覚えるだけではなくて、時代の流れに沿って覚えた方がすらすら頭の中に入ってくるでしょう。数学の公式も同じです。そもそも数学の公式だとか物理の公式といったものは、昔の有名な数学・物理の研究者たちが試行錯誤を繰り返しながら、苦労してやっと導いたものなのです。つまりそういった数学者や物理学者も公式を導くまでに多くの実験を行ってきたという量による成果なのです。公式もただ覚えるのではなくて、なぜその公式が成り立つのかをしっかり理解して、その公式を導けるようにしておくということです。
近年、数学の公式を導かせるような問題も多くみられています。英語の熟語もまた同じです。ただ熟語をもくもくと覚えるというのではなくて、前置詞が表す意味を把握しておくことによって、その熟語に含まれている前置詞から、ある程度その熟語の意味を推測できるので覚えやすいのです。人の覚えられる量というのは人それぞれ差はあるししても、人には限界はあります。だからただ暗記するよりも自分で工夫して覚えると、同じ数の単語を覚えたにしても、それを覚えるのに使った頭の容量は変わってくるということです。
問題を解くのも一緒です。例えば物理の問題で、力を扱う問題があったら、必ずまずはその物体にかかる力とその方向を図示して考える、といったように問題の分野によって共通の解き方があるのです。ある分野の一つ一つの問題に対する解法を身につけるのではなくて、そのような問題に共通する解法を理解しておくだけで、少ない知識で多くの問題に取り組めるのです。
問題集の使い方も同じです。問題集にある問題を1から漏れなく順番に解いていくというのではなく、生徒が明らかに解けるような問題はとばしたりするということだったり、苦手の分野のある問題は丁寧に1問ずつ解くといったような問題集の使い方をすることによって、生徒にとって無駄な時間を省くことができ、他の科目の勉強時間に割くことができるのです。
少し観点は変わってしまいますが、勉強に対するメリハリも同様です。長時間ぶっ続けて勉強していても、人間必ずどこかで集中力がきれて、勉強しているようで実はまったく身についていないということはよくあります。合間合間で休憩をとったり、気分転換になるようなことをしたりすることで、勉強がよりはかどるようになります。こういったメリハリをつけることが大事だということを、常日頃から生徒に強調するように伝えていきましょう。
最後に
多くの生徒は勉強は質が大事だと思っているだろうし、最初から常にその質を求めて効率よく勉強をしがちであります。でも、まず勉強を始めるといったときに、量的な勉強か、質的な勉強かといったら、量的な勉強から始めましょう。勉強もある程度は量をこなさないと、質的な勉強へと結びつけることができないからです。きっと多くの人はおそらく圧倒的に勉強の量が足りないと思います。
特に、ただ質が大事だと言っているような人は勉強量が足りてないと思われます。だから、効率良く勉強するのも大切なのですが、勉強量を圧倒的に多くやっている人はそれだけでも自信になります。私も実際に受験本番になった時に、けっこう不安になったり当然緊張もしていたのですが、やはりその不安を打ち消してくれるのは、「自分は今までこれだけの量の勉強をやってきたのだからきっと大丈夫だ」という、勉強量なのです。
だから何度もいいますが、まずはひたすらに生徒に勉強させましょう。そして勉強していくとだんだんこれでいいのかと生徒は思い始めることもあります。生徒に常日頃から、今の勉強のはかどり具合や、何か悩みがないかなど、そういったコミュニケーションをとっていくことが大事になってきます。勉強量は減らさずに、先ほど述べたような質のある勉強を参考にしながら、生徒にとって今必要なものを確認しつつ工夫しながら、生徒の勉強をより質の高いものにしてもらいたいと思っています。