日本史論述=出題者が最も試したい問い
国公立大学文系を目指す生徒にとって、日本史選択をしていれば、論述問題の対策を避けては通れない問題ですよね。一口に「日本史論述問題」と言ってみても、その種類は様々です。
しかし、出題者の意図の根底にあるのは共通で、それは
歴史を”論理的”に考えることが出来るかどうか
です。
講師の方は大学生以上なのでお分かりだと思うのですが、大学に入学してから、そして社会人になってからも
求められることって”論理的に思考できるかどうか”ですよね。
プレゼンする際に、上司にわかりやすく伝えるために論理的に話す。
起こっている問題を解決していくためにはどうすればよいか論理的に思考する。
などなど、実は様々な場面で論理的思考力が必要になってきます。
少し話がそれてしまいましたが、論述を出題するというのは大学入試に絞って言えば
”学問を論理的に研究していく下地があるかどうか”を見ているのです。
私は仕事柄、いろいろな大学の歴史学教授に会うのですが、私立大学の教授も本当は論述問題を
出題して上記のような力を見たいそうです。
ただ、私立大学は国公立大学のようにセンターでの足切りがなく、受験者数の母体が大きすぎるため
マーク方式にするしか無いのだそうです。
大学入試のために授業で暗記至上主義になるのではなく、生徒のその後の大学生、社会人として活躍できる
ような力を養っていくための力をつけるような論述指導が出来るといいですね。
論述問題対策の指導法
では、具体的にこうした力をつけていくために何をすればよいのか。それをこれから述べていきます。
論述で出題者に見せたいもの
出題者がこの論述を通して見たい受験生の力は上述したとおりですが、
講師が指導の際に意識したい事を具体的に以下の2点に絞ります。
①論理的思考力かつ表現力を培う
いかに、論理的思考力があっても、それを表現することが出来なければ持っていないのと同様に扱われてしまいます。
論理的思考力を培うだけでなく、必ずアウトプットである表現力も鍛えさせるようにしましょう。
いきなり、日本史の問題を扱うとなると難易度が高いです。
なので、私の最初の1時間の授業をご紹介します。
<論述最初の授業>
まず、論述することの面白さや難しさを味わってもらいます。
教材として説明などの文字が何も入っていない4コマ漫画を用意します。(日本史関係だとベター)
それを生徒に配布し、何も見ていない人に説明させるような練習をさせてみましょう。
日本史の論述問題と同じようにその漫画を30字、100字、250字、300字くらいで分けて説明させます。
30字程度の解答なら、「これは~をしている漫画です。」程度ですみます。しかし、それが段々字数を増していくに連れて生徒は自分の解答を客観視した時、
「これだとわかりにくいな」
「なんかくどい感じになってしまった」というような論理的表現力の難しさを実感します。
ここで次の段階に入ります。論述問題では長くなればなるほど、最もわかりやすくするための
「起」・「承」・「結」
の出番ですね。起承転結とは
起:導入部分。何について話すのかを書く
承:話の展開部分、導入で示したところの具体的説明
(転:話の転回、常識をくつがえすなど読者を惹きつける部分だが、承と呼応していなければならない。)
結:結論
ですね。上記で(転)とカッコづけしたのは、この部分は大学入試では問われないからです。
(これは大学に入ってから研究をする際には必要不可欠な部分ですね。)
それよりも、問題の意味を正確に捉え、それにしっかりと答えているか、それが見られるのでこの部分は
書く必要はほぼないと言っても過言ではありません。
まずは、問われていることに対して歴史の事実をこの順番で並べられるよう指導していきましょう。
次の記事で、具体例を示します。
②歴史上における事象の意味・本質を見抜く力を養う
ここが、最も塾講師の腕の見せどころです。
色々な考え方があると思いますが、私は高い専門性に基づいた日本史の授業ができる講師とは
「知識」をたくさん伝えてあげる力よりも、歴史の因果関係を説明しきれる力を持つ人だと思います。
なぜ・何が・どのようにしてその歴史事象が起こったのか。
歴史が点ではなく線となるように説明する。日本史の授業をする中で
論述が出来るような生徒を育てるための手段が伝えるべき「知識」だと思うのです。
授業の準備の段階でもこれを意識できるといいですね。
そのための具体的な方法として、私は「板書計画」の重要性を提唱しています。
1つ1つのカテゴリーが相互にちゃんと線となるような流れになっているかを確認するのです。
具体的に例を示すと、
<板書計画カテゴリー例>
大テーマ:奈良時代
1、平城京遷都 奈良時代の幕開け
2、土地制度の変化
(1)税から逃れる住民
(2)三世一身の法
(3)墾田永年私財法
といったような感じでしょうか。
生徒がこの項目を見るだけで日本史の奈良時代の土地制度の変化の内容が線となって思い出せるようにする意識で計画を練りましょう。
以上のように何よりも日頃の授業の質が生徒の論述力に直結しているのです。
出題パターン
次に、これらの問題がどういう出題パターンをしているのか、
講師が把握しておきたい型を説明していきます。予想問題作成の際に参考にしてみてください。
①内容説明型
これは”この用語の意味を説明せよ”というような基礎的知識を問うているものです。
「永仁の徳政令はどのような令か説明せよ」などの物ならそこまで起承結を意識する必要はないのですが、
「資本主義を歴史的に説明せよ」というような問題が出ると、300字くらいの分量になる可能性があります。
②歴史事象の経過型
これはある歴史の重要な事象がどういうプロセスを経ていたのかについて説明を求められる問題ですね。
最もよく聞かれるタイプです。先ほどの「土地制度の変遷」や「仏教史」などテーマ史にそって出題しやすいからです。関連する出来事の時代をこえた理解が重要になります。
③理由型
これはその歴史的事象がなぜ起こったのか?その背景にあったものはなにか?などを聞く問題です。
例えば「2・26事件の背景には何があったのか」や「国体護持はなぜ必要だったのか」など背景を理解していなければ解けない問題です。
④結果型
これはある歴史的事象が起こった結果、そうなる前と後での変化についてが出題されます。
主に聞かれるのは社会の変化ですね。具体的には「元寇の後、将軍と武士の関係はどう変わったか」などが聞かれます。
⑤特徴・意義型
これはよく史料を絡めた論述問題で出題されます。
具体的には「この史料の歴史的意義はなにか」などです。
例えば「江戸時代に民衆に対して地方にもまんべんなく高札が掲げられていた歴史的意義はなにか」
と問われれば、江戸時代の支配が行き届いていること。そして、民衆の識字率が高いことから高い教育力を有していたことなどを答えればよいわけです。
まとめ
以上ここまで具体的な指導法と塾講師が知っておきたい出題パターンについてまとめてきましたがいかがだったでしょうか?
論述問題は中途半端な勉強では絶対に太刀打ち出来ない問題です。
しかし、それは逆に捉えれば論述問題に慣れることで
上述したような歴史を見抜く本質的な力を養うことが出来ます。
なかなか塾講師にとっても論述問題を教えるのは負担が大きいのですが、自分自身の専門性を磨くことにつながるので是非恐れずにチャレンジしてみてくださいね。
以上です。ここまで長文ご精読ありがとうございました!