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【塾講師の教養にも!】世界3大宗教の教え方①キリスト教

高校生

2021/12/17

あkk世界3大宗教

高校の倫理において、世界3大宗教の指導は必ず通らなければいけない分野ですよね。
これら3つの宗教は1つ1つちゃんと教えようとすると、それだけで倫理の1年間分の授業が終わってしまう
くらい奥が深いテーマです。

十字架

高校の倫理は2次試験のような記述方式で問われるケースはほとんどなく、入試で利用する受験生の大半は
国公立2次のためのセンター試験のみとなっています。

つまり、選択問題形式での正誤問題などで出題されることがメインとなっているのです。
選択問題に焦点をあてると、必然的に指導法は「3大宗教の比較」というものがメインになります。

何が違うのか、「一神教」か否か。キリスト教のキーワードは「隣人愛」などなど。
センター試験で使うだけなのであまり時間をかけられないという現状から、各宗教そのものよりも
「比較」に重点を置いた指導になってしまいます。

しかし、筆者が拙稿「宗教をわかりやすく教えるために」(URL:http://www.juku.st/info/entry/738)で
日本での宗教意識やなぜ宗教教育が重要なのかについて述べたように、実は「ホロコースト」という
惨劇や現代におけるパレスチナ問題などはこの3大宗教が深く関わっています。

高校の公民分野においてもそうした世界情勢をふまえ、各宗教の中身にまで踏み込んだ授業をしなければならないと思うのです。もちろん、それは受験勉強にもつながっています。
こうした思いから、本稿(キリスト教)から3記事にわたり、世界3大宗教について、教える側の講師が
知っておきたい教科書や指導所には書いていない専門的な部分に踏み込んだ記事を執筆していきたいと思います。

キリスト教

 現在、世界の人口の約3人に1人という割合を占めているキリスト教は、日本にもキリスト教系の私立学校や日本各地に教会があるため、生徒にとっても最もなじみのある宗教の1つと言えるでしょう。
教会
おそらく、教えている生徒の中にもいるかもしれません。なので、キリスト教徒の生徒からしたら自分が
間違った説明をしたら厳しい突っ込みが来る可能性があるので、正確な知識を確認しましょう。

「キリスト」の由来と教典

まずは、創始者イエスについてです。キリスト教について述べるためにはどうしてもユダヤ教との関連から考えていかなければならないので折々で触れていきながら説明していきます。
イエスはこのユダヤ民族の中からナザレにて生まれました。
キリスト教徒はイエスのことをイエス・キリストと呼びます。

キリスト

キリストというのはヘブライ語においてメシア(救世主)という意味ですね。
ユダヤ民族はユダヤ教に対してキリスト教という呼称を用いたりしますが、
ユダヤ民族にとっては、イエスはキリスト(救世主=メシア)ではありません。

以前の記事でユダヤ教については書いたのですが(前掲「宗教をわかりやすく教えるために」)
苦難の道を歩んできたユダヤ民族が待ち望んでいたのは、強くたくましい
軍事指導者のようなメシア(救世主)でした。
しかし、イエスは「隣人を愛しなさい」「悔い改めましょう」という軍事とは関係ないことばかりを
説いており、そのような素質は感じられなかった。
そして、何より自らを「神の子」というイエスをユダヤ民族は許せなかった
これはなぜだと思いますか?授業でも生徒たちに問いかけていただきたい質問です。
実はこの答えがユダヤ教とキリスト教が最も相容れない部分です。

先ほどの前掲「宗教をわかりやすく教えるために」でも確認していただきたいのですが、ユダヤ教
というのは世界最古の「一神教」です。この天地全てのものは造物主である「ヤハウェ」という
唯一無二の神が創ったと考えています。

ところが、先ほども述べたように、ユダヤ教徒の代表にすぎなかった「イエス」が自分は「神の子」
であるといいます。
神のような存在が複数いることを認められないユダヤ教徒はこれをもって
イエスは偽物のメシアであると結論付けます。

キリスト教の教典を『新約聖書』と言うのですが、そこにはユダヤ民族によって死刑になる
イエスの姿が残されています。
キリスト教徒はこの出来事によるイエスの死を、全人類の罪(現在)を背負ってくれたこと、
と捉えています。(これが神と人間の新たな契約という意味で『新約』です)
これによってイエスを死に追いやったユダヤ民族はキリスト教徒にとって未来永劫
罪人となってしまうのです。

キリスト教の諸宗派

先ほど、冒頭でキリスト教には世界の約3人に1人信者がいる。という話をしました。
しかし、その宗派は様々で現在では600以上あるといわれています。
色々

「真言宗」や「天台宗」、「臨済宗」などなど日本の中でも仏教が様々に枝分かれしているのと同じですね。
キリスト教で最も規模の大きいものは、ご存じ「ローマ・カトリック教会」です。
他に大きな勢力を持つ宗派は「東方教会」「プロテスタント教会」などでしょうか。
これらは何が違うのでしょうか?
キリスト教史を探っていくと、キリスト教は正統と異端のせめぎあいの歴史であることがわかります。
入試で最も問われるカトリック教会と東方教会、そしてプロテスタント教会に絞って特徴を述べていきます。

カトリック教会:「三位一体論」

カトリック教会の最も特徴的な考え方は「三位一体論」です。
まず、この「三」という数字が意味するのは以下のようなものです。

①神:エホバ(ヤハウェと同じ)
②神の子:キリスト
③聖霊:天地の動きを操る聖なる存在

これらは3つあるが、実は1つの存在であるとするものです。
ここで、誤解がないようにしておきたいのですが、キリスト教も「一神教」です。
ただ、上記の①~③を見ると、崇める対象のようなものが3つあるように見えますよね。
長い間カトリック教会では、神がこれでは複数いるような状態になっていることが問題となっていました。
教典である『聖書』にも複数神がいることは決して書かれていません。
つまり、このままでは矛盾が起こってしまう。
そこで、この「三位一体」という考え方によって決着をつけました。

東方教会:「皇帝教皇主義」

少し世界史的内容になるのですが、395年、ローマ帝国が東西に分裂しました。
その後東側を拠点とする東ローマ皇帝はコンスタンティノープルのみならず、各地の教会に干渉を続け、
西側カトリック教会からの反感を買っていました。
726年に東ローマ皇帝のレオ3世が突如聖画像崇拝の禁令を出します。(イコノクラスム)
聖画像を崇拝するローマ・カトリック教会側は強く反発し、ローマ教皇(カトリック)は東ローマ皇帝
に対して抗議します。
その後も対立は続き、ついに1054年に(東)東方教会と(西)カトリック教会は双方に破門しあいます。
この事件をきっかけに東西の教会は完全に袂を分かつことになったのです。
ちなみに1965年に双方の破門を解くまで900年以上、破門した状態のままでした。

今少しふれたように、東方教会は東ローマ帝国の皇帝を教会トップに立ってもらい、国の政治と
一体化して発展していきました。
後にイスラム勢に押されるようになり、ロシアなどのスラブ方面にも活路を見出していきますが、
この時にもそれぞれの国王が教会のトップにたつというように
「皇帝教皇主義」を持っていたのが、東方教会の大きな特徴です。

宗教改革期におけるプロテスタント教会

宗教改革期の時期に時代を移動します。
今度はプロテスタント教会がカトリック教会に対して異議を唱えます。
その最も端緒な例としてあげられるのが「免罪符」ですね。
免罪符はカトリック教会が売っていたものなのですが、「罪を犯してもお金を払って買うと許される」
というものでした。
これはもう教会という”権威”を利用した悪徳商法のようなものですよね。

プロテスタントはこれを批判し、そのような人が作った札ごときで神の救いが得られるはずはない、
キリスト教への信仰をすることによってこそ我々は救われるのだと主張します。
さらにここから「我々はもともと救われるかどうか決まっている」というような予定説を唱える
カルヴァンが登場してきます。

まとめ

前記事では、宗教教育の重要性についての事を書きながら
その具体的な指導法や教材研究までは書ききれなかったために本記事を執筆しました。
本稿ではキリスト教そのものがどのような背景でこれまで歩んできたのか、その宗派はこのように
「解釈」の違いで枝分かれしていったことがお分かり頂けたかと思います。
ユダヤ教との関連から倫理を教える講師が知っておきたい内容について説明してきましたが
いかがだったでしょうか?

キリスト教を教える際には、キリスト教そのものだけでなく、その背景にあるユダヤ教との関連で説明すると
わかりやすくなるということを知っていただきたく
ユダヤ教とのつながりに焦点をあてて今回キリスト教について述べてきました。

中々倫理で宗教の、しかもこのキリスト教だけに時間を割くことは難しいかもしれませんが、
キリスト教を教える際に参考にしていただけたらと思います。以上です。ここまで長文ご精読ありがとうございました。

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