可算名詞と不可算名詞
今回はこの二つの区別が簡単につく指導法を紹介していきます。講師の皆様がもたれている生徒のなかにも、この単元をしっかりと理解できている生徒は少ないのではないでしょうか。このふたつは模試でも、センター試験でも、各大学入試でも決まって文法問題の箇所で聞かれます。どのテストでも繰り返し出題されるのは、問題の製作者側が生徒がきちんと理解できていないことを分かっているからです。この問題が毎度出てくるたびに解けたら、他の生徒より一歩リードできます。この一歩こそが合格、不合格の分かれ目だと思うので、必ず講師の方はこの単元を生徒にしっかり理解させてください。
では、内容に入っていきましょう。
名詞は一般的に可算名詞(数えられる名詞)と不可算名詞(数えられない名詞)に分けられることはほとんどの生徒が知っています。
可算名詞
<可算名詞の特徴>
可算名詞とは、概念的に言えば、一定の形と境界があり、数えられるものをさします。通常、可算名詞のみで用いることはなく、冠詞(a/an)やmyなど代名詞の所有格と共に用い、複数形があります。
単数形にはa/anの不定冠詞がつく
(例)a cat an egg
単数/複数の区別がある
(例)a book /books a foot/feet
数詞やmany/fewなどの数に関する形容詞がつく
(例)two balls
a few boys
many plans
可算名詞で困るのが、<不規則な複数形>です。通常、複数になる場合は、名詞に-sを付けると、生徒たちは習うと思いますが、例外として不規則に変化する名詞があります。入試でよくねらわれるものを簡単に紹介します。普段生徒たちが使っている単語帳では、あまり目にしないものが多いので、講師の方がわかっているか確認しなければなりません。
analysis➡analyses 解析
crisis➡crises 危機
criterion➡criteria 基準
deer➡deer 鹿
half➡halves 半分
leaf➡leaves 葉
life➡lives 生命、人生
sheep➡sheep 羊
不規則とはいわれるものの、leaf➡leavesのようにルール化できるものもたくさんあります。過去形、過去分詞を覚えたときのように、繰り返し声に出して覚えさましょう。また、月に一回小テストをさせてみるのもいいかもしれません。
不可算名詞
<不可算名詞の特徴>
一方、不可算名詞とは、概念的に言えば、不定形で具体的な形を持たず、他との境界がないものをいい、単数の個体では数えられない名詞とされます。
通常、不定冠詞を付けたり、複数形になることはあり得ません。
・不定冠詞をつけない
beauty(美)、furniture(家具)
・通常、複数形にならない
water(水)、air(空気)
おそらく、ほとんどの生徒が苦手とするのが不可算名詞でしょう。下の表でまとめられたものを見てください。系統立ててイメージすると、不可算名詞となるものの傾向が理解できると思います。
代表的な不可算名詞
食品 |
bacon(ベーコン)、beef(牛肉)、bread(パン) |
飲み物、液体 |
beer(ビール)、oil(油)、wine(ワイン) |
物質、気体 |
coal(石炭)、dirt(ほこり)、wood(材木) |
抽象的で不定形のもの |
anger(怒り)、biology(生物学)、courage(勇気) |
一つ一つではなく全体としイメージするもの |
homework(宿題)、work(仕事)、luggage(荷物) |
これらを見ると、なんとなく不可算名詞のイメージがわきますよね。不定形で具体的な形を持たず、他との境界がない、という先程の説明にも、少しは納得してもらえると思います。
しかし、これで終われば話は簡単なのでしょうが、この区分けにもやはり例外が存在します。面倒くさいことに、一つの名詞なのに<意味によって>可算名詞になったり、不可算名詞になったりするものがあるのです。その例外こそが、生徒が冠詞を理解する上での妨げとなるのです。例えばschoolという単語は、可算名詞と不可算名詞、両方の使い方が出来ます。
・可算名詞のschool(学校の意味)
There are six schools in that city. (あの市には6つの学校がある)*複数形
・不可算名詞のschool(授業の意味)
School begins at eight. (授業は8時に始まる)*無冠詞
このように同じ名詞でも、可算名詞と不可算名詞では意味が異なり、それによって冠詞の有無も異なります。この区別は文脈から判断するしかありません。
今の例は同じ単語での可算、不可算でした。ですがこのパターンは学校以外あまり出ません。よく出るのは、その名詞の単語自体が複数形(sがつくということ)になった場合での意味の変化です。このような名詞はたくさんあります。しかし、それらを一つ一つ暗記するのはとても大変です。このような、特別複雑なものを暗記するときはは、入試最頻出のもののみで十分だと思います。下に表記されているのは、私の経験上、頻出度が高いものです。わかりやすくまとめたので生徒に覚えさせてみてください。
複数形の意味に注意
force(力)➡ forces(軍隊)
good(善/利益)➡ goods(商品)
custom(習慣)➡ customs(税関/関税)
manner(方法)➡ manners(作法)
arm(腕)➡ arms(武器)
letter(文字)➡ letters(文学)
可算名詞と不可算名詞の数え方
可算名詞と不可算名詞に触れたついでに、数量の表し方も紹介していきます。数量の表し方も生徒がよく苦手とするものの一つですね。ではわかりやすい指導法を紹介していきます。
みなさんご存知のように、数えられる名詞と数えられない名詞では、ものの数え方も異なります。例を挙げると、<多い>を表す形容詞にはmanyとmuchがありますが、<数が多いならmany>、<量が多いならmuch>を使います。このように、いくつかの名詞によって形容詞も使い分ける必要が出てきます。
可算名詞の数量の表し方
少ない➡ ➡ ➡ ➡多い
few a few some several many most all/every
不可算名詞の数量の表し方
少ない➡ ➡ ➡ ➡多い
little a little some much most all
更に名詞も組みあわせた表を生徒に書かせるとさらにわかりやすいと思います。
数量の程度 |
可算名詞 |
不可算名詞 |
ほとんどない |
few students |
little water |
少しはある |
a few students |
a little water |
いくらかある |
some/several students |
some water |
多い |
many students |
much water |
ほとんど、大部分の |
most students |
most water |
すべて、どの…も |
all students/every students |
all water |
生徒には可算名詞の方では名詞にsがつくことに注意させましょう。
ここでもまた例外があり、a lot ofやlots ofは可算名詞にも不可算名詞にも用いることが出来ます。(a lot of students[大勢の学生]/a lot of water[大量の水])。
量を表す不可算名詞の場合は<数え方の元となる単位>が重要になります。そもそも不可算名詞は<数えられない名詞>だから不可算と呼ばれているのですが、それを数える方法があります。それこそが、<数え方の元となる単位>なのです。例えば、「コップ一杯の水」なら水の入れ物であるコップが、「一枚の紙」なら紙という形状を表すsheetあるいはpieceが、数量を数える元の単位となります。
可算名詞の場合は、単純にtwo students、three studentsと<数字+複数>で表すことが出来ます。日本語で人数を数えるなら「一人、二人」、鉛筆を数えるなら「一本、二本」と名詞により数を変えます。不可算名詞の場合も、この日本語の時と同じく<そのもの自体をどうイメージするのか>が重要なのです。不可算名詞の数え方を熟語として捉えている生徒が多いようですが、このように日本語に置き換えて考えれば簡単に表すことが出来るのです。
例を生徒にいくつか挙げればすぐに納得してもらえると思います。本来、一個、二個と言った個体としてあつかわれることのない不可算名詞が、ビンやスプーンといった容器に入れたり、<形状的な特徴>を元にして<数えられるようになる>ことが分かるはずです。
a bar of iron 鉄の棒一本
a bottle of wine 一本のワイン
a can of juice 一缶のジュース
a lump of sugar 角砂糖一個
a slice of ham ハム一切れ
a spoonful of cocoa ひとさじのココア