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今、日本が問われていること
「沖縄には何故米軍基地が多いのか?」
よく、ニュースなどで米軍基地を見たことがある生徒は多いと思います。
しかし、そもそも何故沖縄にこれだけ米軍基地が集中しているのか、ということに関しては
説明し切ることが出来る子は殆どいないと言っても過言ではありません。
もちろん、これは生徒だけでの責任でもありません。
小学校、中学校、高校と経てきた生徒は、沖縄の歴史に関連する事象は学んでいますが、
現行の学習指導要領、教科書はそれぞれ1つ1つの”つながり”を体系的に学ぶ構造はなっていないからです。
どの歴史的事象も深く、広い奥行きがあるため沖縄の歴史を体系的に学習しようとすると
1年間の授業を使っても教えきれないでしょう。
ある程度取捨選択はしなければなりませんが、それでも沖縄の現代につながる問題を
もっともっと生徒たちに考えさせるべきだと筆者は考えています。
そう考えるのには1つ理由があります。冒頭の話に戻ります。
沖縄県は日本の国土面積の0.6%という大きさです。
その0.6%の面積の沖縄県の中のどのくらいの割合を米軍基地が占めているのでしょうか?
なんとその数字は20%、5分の1が米軍基地なのです。
では、沖縄にある米軍基地は日本全体の米軍基地の何%を占めているのでしょうか?
その数字は73.9%にものぼります。
日本は第2次世界大戦で敗戦し、間接統治を受ける事になりました。
こうした背景があって日本国内に外国のための軍事基地を提供する事になった、という力関係の上下については本稿では不問としますが、
沖縄の県民は本土の日本人と同じ様に税金を納めているにかかわらず、
日米同盟のために常に基地の飛行機の離着陸に伴う騒音や危険と隣り合わせで
生活をしなければならない状況を強いられているのです。
日本政府は地方交付税を多めに出す等の対応はしてきましたが、
問題はお金なのか、それとももっと別のことなのかということを含めて
生徒たちに沖縄県を今一度考えてもらう授業を行う必要があると思うのです。
本稿ではこうした思いから高校生の生徒たちに
沖縄県の「現代社会」につながる基地問題を考えるための指導法
をご紹介します。
沖縄の米軍基地
さて、そもそも「何故沖縄に米軍基地が多いのか」という中心テーマから考えてみることにしましょう。
沖縄に米軍基地が集中して設置された経緯を簡単に示すと次のようになります。
<基地施設の流れ>
(1)太平洋戦争における沖縄戦で米軍勝利
(2)占領、そして米軍は本土攻撃のための基地整備
(3)日本降伏(1945.8.15)~東西冷戦開始、米軍の対中国、台湾戦略の一大拠点となる
これら3つの流れを順に追うことで、基地問題の全体像が見えてきます。
以下具体的な指導法をご紹介します。
太平洋戦争における沖縄戦
沖縄に何故米軍基地が集中しているのか。
これを考えるために時計の針を1945年まで戻してみましょう。
全ての事の発端は、太平洋戦争末期の沖縄の地上戦に起因しています。
太平洋戦争において当時統治していた太平洋の島々を守る日本軍を次々に壊滅させたアメリカ軍は
「アイスバーグ(氷山)作戦」という沖縄地上戦に向けて1500隻の艦船、そして最終的に54万8000人の
兵隊を投じます。
1945年3月23日、アメリカ海軍による激しい艦砲射撃が沖縄の空に降り注ぎます。
そして同年4月1日、沖縄本島にアメリカ軍がついに上陸し、ここから地上戦が繰り広げられます。
対する日本軍は首里城の地下に司令部を設置し、対策を考えます。
先述したとおりアメリカ軍が約54万人動員したのに対し、沖縄で動員されたのは地元の防衛隊員、
学徒兵などを含め11万6000人という数でした。
13歳の男子生徒は兵士となり、11歳以上の女子生徒は看護要員にするなど、
極めて若い世代までを動員する、島をあげての「総力戦」と呼ばれる状態でした。
沖縄本土に上陸したアメリカ軍と戦いを交えるということは、
日常の生活の場所が地上戦の舞台となったということを意味しています。
この戦いは日米両軍の兵士の殺し合いのみならず、住民も多数巻き込まれる悲惨な戦いとなってしまいます。
アメリカ軍による艦砲射撃、そして鉄砲による攻撃の凄まじさは「鉄の暴風」と表現されるほどでした。
こうした激しい戦いが約3ヶ月続き、
6月23日沖縄守備軍牛島満司令官は沖縄最南端の糸満市摩文仁に追い詰められ、自決します。
この日をもって、日本軍の組織的抵抗は終わります。
本土の日本人にはほとんど知られていませんが、沖縄県にとっての、「終戦の日」は8月15日ではなく、
6月23日なのです。
占領、そして米軍は本土攻撃のための基地整備
この沖縄の地上戦に勝利したアメリカ軍は次の行動に移ります。
生き延びた住民を県内の16箇所に設けられた収容所に入れ、無人となった沖縄の地に
日本本土攻撃の準備のための巨大な基地の建設に着手します。
この時アメリカ軍が基地に選んだ土地は、広大な平地、そして見晴らしの良い高台がある場所です。
軍事的に有効性があることがその理由でした。
上記の写真は筆者が実際に普天間基地へ行った時に取ってきた写真です。
繰り返しになりますが、写真からもアメリカ軍が基地として広大な平地を選んだことがよくおわかり頂ける
のではないでしょうか。
その後、米軍は基地のために必要な土地を確保した上で、不要な土地は住民に返します。
基地のために土地を奪われた住民はアメリカが指定する地域に移住するしかありませんでした。
普天間基地の写真を今一度見てください。
基地の周りに住宅がたくさんあるのは、こうしてアメリカ軍が
土地確保後に指定した地域に新たに建てた住宅なのです。
普通、こうした飛行場を設営した際には、飛行機の離着陸時の墜落等の危険を回避するため
緩衝地帯という、十分な余白地帯を作らなければなりません。
しかし、アメリカ軍は不要な土地を返すだけで緩衝地帯を設定しなかったため、
飛行場のすぐそばに住宅が設置されてしまうという危険な状態が出来上がってしまったのです。
今現在でも、普天間基地は「世界で最も危険な飛行場」とされています。
日本降伏(1945.8.15)~東西冷戦開始、米軍の対中国、台湾戦略の一大拠点となる
1945年8月15日、日本がポツダム宣言を受諾し、連合国に対して降伏します。
上述したとおり、アメリカ軍が沖縄を軍事利用する理由は「本土攻撃の準備のため」であったはずです。
それならば、戦争が終われば沖縄の占領も終わるはずである、多くの住民もそう考えていました。
しかし、現代の沖縄を見て分かる通り、基地はなくなりませんでした。
これは、戦後ソ連を筆頭とする社会主義陣営とアメリカを筆頭とする資本主義陣営による「東西冷戦」
が深く関わっています。
アメリカ軍は東西冷戦が激化する中で、沖縄を太平洋の「Key Stone(要石)」に位置づけます。
地図帳を確認していただきたいのですが、沖縄が台湾に近いという地理的条件がアメリカにとっては
好都合でした。
もし中国が台湾に侵攻し、紛争が起こった際には沖縄に米軍基地があれば、米軍はすぐに駆けつけることが
出来ます。
朝鮮戦争が始まると、その重要性はますます増し、米軍が24時間使うことの出来る沖縄米軍基地は
必要不可欠なものと捉えるようになりました。アメリカは沖縄について以下のようにコメントしています。
「米国は日本、韓国、台湾、フィリピン及びいくつかの東南アジア都の間に相互安全保障条約を締結している、これらの条約は米国に対して他からの侵略や行動からそれらの国を防衛することを委任している。」(沖縄県編『沖縄苦難の現代史』より)
不測の事態が起こるならば、すみやかに行動するために基地を持っていなければならない。
これがアメリカが今でも沖縄に基地を持ち続ける言い分なのです。
このように、沖縄の米軍基地はなくなるどころか、戦後も増えていってしまいました。
まとめ
「沖縄に何故米軍基地が集中しているのか」を考えるために具体的に3点ポイントを示してここまで説明してきましたがいかがだったでしょうか。
今回の記事では下線部の目標を達成することに照準を絞ったため、
もっともっとお伝えしたいことがある中で、絞って絞って説明させていただきました。
最後に、本稿を通して筆者が読者である社会科講師の皆さんに、1つお願いしたいことがあります。
それは、是非一度実際に沖縄に足を運んでいただきたいということです。
以下の写真をご覧ください。
これは平和の礎と言って、沖縄本土最南端糸満市の摩文仁の丘の手前に設置されている戦没者を祀る碑です。
ここには沖縄戦で犠牲になった住民約13万人、地元の防衛隊員2万8000人、日本軍兵士6万5000人、
アメリカ軍兵士1万2000人全ての名前が刻まれています。
戦争による犠牲は上記のように数でまとめられがちですが、
犠牲になった人たちには我々と全く同じように1人1人名前があるのです。
こんな当たり前のことですら、筆者は沖縄に実際に行って碑を見なければ実感を伴って理解することが
出来ませんでした。
感じ方、考え方は人それぞれですが、きっと実際に行くことでしか気づくことの出来ないことが
たくさんあるはずです。
今後我々戦後世代が向かい合わねばならない「基地問題」を沖縄無しで理解することは出来ません。
そのためにも、生徒たちに主権者となった際にしっかり関心を持たせるために、
講師が実際に足を運んで見て考えておくことで生徒にも実感として伝えられるはずです。
本稿は以上です。ここまで長文ご精読ありがとうございました!
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