直接話法と間接話法の違い
直接話法と間接話法を教える際は、まずこの二つの違いを明確にさせましょう。この二つの話法はそれぞれ複雑なものなので、まずは二つの違いを生徒にしっかり理解させてから、それぞれの内容に深く入っていきましょう。
*赤文字は注意して見る箇所です。
①I said "I am interested in the movie".
(私は「私はその映画に興味をもっています」と言った。)
②I said (that)I was interested in the movie.
(私は、自分がその映画に興味をもっていると言った。)
①が直接話法です。直接話法とは人の発言をそのまま引用したものになります。①では「私」のその時の発言がそのまま引用されていますね。訳の部分の「」を生徒に注目させると引用されているのがよくわかると思います。また、この文では発言した時点では「その映画に興味を持っている」のは<現在のこと>だったので、動詞は現在形になります。
②が間接話法の文です。伝える人が言い直す形となります。そしてその発言内容は現在から見た過去のこととして言い直されています。そのため、時制の一致が働き、動詞が過去形になります。また、間接話法で用いられるthatは省略することが出来ます。この説明を終えたら必ず時制の一致を正しく理解しているか、確認してください。この二つの区別がついた、それだけでもう完璧にわかった感じになっている生徒が多いですが、この単元はもっと奥が深いものです。一歩進むたびに確認するべきものがあります。ここでは時制の一致に関する知識の確認を必ずしましょう。時制の一致を理解していないのはこの単元を理解していないのと同じであるといっても過言ではありません。
時制の一致の理解の確認(間接話法)
①従属節が同じ時点のこと(基本的な文)
We think she is honest.(私たちは彼女が正直だと思う。)
We thought she was honest.(私たちは彼は正直だと思った。)
that節を使う時制の一致では常に最初に来る動詞に注目させましょう。また、間接話法では、最初の動詞(主節の動詞)が過去形であったらthat以下の文の動詞も必ず過去の表現になると指導しましょう。
②従属節が同じ時点のこと(進行形・完了形)
I understood what she was saying.(彼女が言っていることは理解できた。)
I knew she had been to America.(私は彼女がアメリカに行ったことがあることを知っていた。)
③従属節の過去のこと
It seems that the toast was burnt.(トーストが焦げたようだ。)
It seemed that the toast had been burnt.(トーストが焦げたようだった。)
④従属節が未来のこと
I think she will go .(私は彼女は行くだろうと思う。)
I thought she would go.(私は彼女は行くだろうと思った。)
過去形をもつ助動詞
will➡would can➡could may➡might have to➡had to など
最初にくる動詞(主節の動詞)が過去形の場合、同じ時点のことであれば従属節でもそれに合わせて過去形の助動詞を用いる。
I thought she could go.(私は彼女が行くことが出来ると思った。)
では過去形を持たない助動詞はどうなるのか
must need should ought to had better used to など
He said Tom must be angry.(彼はトムは怒っているに違いないと言った。)
I thought you should be sorry.(私は君は反省すべきだと思った。)
主節の動詞が過去形で、従属節で述べることが同じ過去の時点のことでも助動詞の形は変わりません。この部分をあやふやに覚えている生徒はとても多いです。各単元に例外というものが発生してしまうことは仕方のないことなので、それを生徒に受け入れさせつつ、講師の方も忘れずに指導してください。生徒はあやふやな部分をめんどくさがって、決して自分から聞いてきません。なので講師の方は授業前に複雑そうな部分をあらかじめチェックしておいてから授業に臨むように心がけましょう。
二つの話法で注意すべき点
人称代名詞
He always says,"I don't like my mother."
(彼はいつも「私は母が好きではない」と言う。)
He always says (that)he doesn't like his mother.
(彼はいつも、自分の母が好きではないと言う。)
上が直接話法の文、そして下の方が間接話法の文になります。このように二つの文を挙げて説明する際には生徒に「どっちの文が直接話法か?」などと、いちいち聞いてみるのもいいと思います。ぱっと言えるか言えないかでその後の授業のスピードや、補足説明をするかなどを見極めましょう。
ここで重要なのは時制だけに気を取られてはいけないということです。話法を用いる際にはこの発言は誰のことなのかを考えるようにと指導しましょう。上の直接話法の文では最初に説明したように発言者の発言をそのまま引用するものでしたね。なので当然ここでのIやmyは彼が自分のことを言っていることになります。
一方、下の間接話法の文では伝える人の視点で言い直していますね。なので発言内容を表す文ではheやhisが使われています。この部分は生徒が英作で話法を用いる際に一番よく間違えるところです。時制を気を付けるあまり、人称代名詞まで気が回らないのです。このような、視点を変えて話す、引用するなどと言った考えをスムーズに行うにはやはり慣れが必要です。各ポイントを説明した後は、必ずそのポイントを実際に使った英作を生徒にさせましょう。ここでは人称代名詞を用いた英作をさせましょう。
<例>下の文を英文に訳せ。
彼女はいつも「私は故郷の町が好きでない」と言う。
彼女はいつも、自分の故郷の町が好きではないと言う。
英作の際にはすぐに何話法か見分けられると思います。直接話法は引用なので、やはり「」のついたほうが直接話法であると考えられます。なので下の引用されていない文を間接話法と考え、伝える人の視点でとらえます。そのように考えると
<答え>
She always says,"I don't like my hometown."
She always says(that)she doesn't like her hometown.
では、ここで応用問題です。覚えること、気を付けなければいけないことがたくさんある単元を教えるときは時々一回ストップし、それまで教えたことをしっかり理解できているか、確認しましょう。
今まで説明したことの確認
<英作しなさい>
彼は本当のことを話すことは出来ないと言った。
彼は「本当のことを話すことは出来ない」と言った。
<答え>
He said (that)he couldn't tell the truth.
He said,"I can't tell the truth.”
上の文では間接話法で<彼>の発言を伝えているので、he couldn't tell the truthとなります。過去形のcouldn'tが使われているのは、saidと同じ時点のことだからです。間接話法では主節の動詞が過去形であればthat以下の動詞も必ず過去形になる、最初に説明したものです。下の文ではcan'tが使われています。講師の方は特にこの箇所がしっかり区別できているかを見てあげてください。また、直接話法は発言をそのまま引用しているので" "を忘れないように注意させてください。
今回はここまでにします。今回は話法の基本的な見分け方や注意事項を紹介しました。次回はより実践的な話法の使い方を紹介しますのでぜひ目を通してみてください。一人でも多くの講師の方にこの記事を役立てていただけたら幸いです。