連立方程式の学習
一年で学んだ一次方程式をマスターした生徒達に、新しい一次方程式を見せてあげるのが連立方程式です。文字が複数ある事が特徴ですが、主に二元一次方程式、という「文字が二種類ある一次方程式」を解いていきます。ここから発展すれば同様のやり方で三元でも四元でも解くことが出来るようになる、一次方程式というジャンルの重要なポイントです。
さて、その連立方程式について扱う本項ですが、その詳細は以下の通りです。
・連立方程式とは何か
・どのような問題があるか
・その解き方
それでは早速、本題に入っていきましょう。
連立方程式って何?
連立方程式とは先述の通り文字が複数存在する方程式です。今までは「xは何?」と聞かれていたのに、ここでは「xとyはそれぞれ何?」と聞かれているという事ですね。今までの物とは違うという事をはっきり分からせるために、一つ生徒さんに問題を与えてみましょう。
「1本80円の鉛筆x本と、1つ100円の消しゴムy個を買ったら、1780円だった。それぞれいくつずつ買っただろうか?」
80x+100y=1780
これを、この情報だけで解けるか尋ねてみましょう。察しの良い生徒はすぐに解けない事を理解すると思いますが、「1と17!」などと「式を成立させる事=解答」だと思ってしまう生徒は「解くことが出来る」と思っているかもしれません。今までの一次方程式では式の成立と正解がイコールの関係であったので、仕方の無い事なのです。
まずはそういう生徒に「11と9でも成立してしまい、一つの答えに絞れない」という事から「これだけの情報では解くことが出来ない」という事を認識してもらいましょう。
式がいきなり二つに増えてただでさえ嫌なのに、理由を聞いても「そうじゃなきゃ解けないから」としか言われないのでは嫌な感じは払拭されません。実際に「なるほど確かに、これじゃ解けないな」となる事が連立方程式のファーストステップになります。
となると次に考えるべきは「どうすれば解けるようになるのか」です。式が1つでは解けないという事は、情報が不足しているという事です。言い方は色々あると思いますが、先の問題を例にしてみましょう。「鉛筆の本数にも消しゴムの数にも何も条件が無いから、答えが色々考えられてしまう。という事は、もう一つ条件が何かあったら絞れるのではありませんか?」
という様な事を伝えましょう。
「例えば鉛筆と消しゴムの数の合計が決められていたらどうでしょう?」
と言って、
「1本80円の鉛筆x本と、1つ100円の消しゴムy個を買ったら、1780円だった。そして鉛筆と消しゴムの合計は20個だった。さて、それぞれいくつずつ買っただろうか?」
80x+100y=1780
x+y=20
「この二つの式を両方とも満たすxとyは何でしょう?」
となりましたらこれを生徒さんに考える時間を与えましょう。
「さっきは解けなかったけどこれならばどうだろう?」
解ける生徒がいれば解いてもらっても良いですし、いなければいったんここで区切りましょう。
「複数の式が連なって成立する、これが連立方程式です」と、連立方程式とは何か、しっかりと定義しましょう。この時点で、二つの式で正答が出せるかをしっかりと分かっていなくても構いません。この後の問題を、2つの式で解けるかどうか、実践を通して認識しましょう。
どのような問題があるのか
問題の種類はそこまで多いものではありません。文字が二つ、という事は求める数字が二つという事になります。普通に連立方程式だけが出題されるような問題ではなく、文章から連立方程式を組み立てる問題はこれまでの文字が一つの時と大差ありません。
先程の例のように「二つの物の個数を聞く問題」は多い。しかし、連立方程式で多くの生徒を苦しめる、典型的な問題はこれとは別に二種類存在します。記憶に苦い何かを想起する人も多いかもしれないですね。
その一つは、「距離、時間、速さの問題」です。
「ある広場を1周すると10kmある。そのコースを初めは自転車で走り、途中から自転車を置いて徒歩で進んだ。結果、1周するのにかかった時間は2時間半だった。自転車で走る速度が時速16km、徒歩の速度が時速4kmであった時、自転車で走った距離と徒歩で進んだ距離とをそれぞれ求めなさい」
というような問題です。その解答については後程お話ししますので、まずはもう一つの典型的な問題を紹介します。筆者が大学で聞いてみても、この問題はものすごく嫌われていました。「食塩水の濃度の問題」です。
「6%の濃度の食塩水と、10%の濃度の食塩水を混ぜた結果、8%の濃度の食塩水が400mlになった。それぞれの食塩水を何mlずつ混ぜたのかを求めよ」
といったような問題ですね。
「距離、速さ、時間」の問題も、濃度算と呼ばれるこの食塩水の問題も、初めの鉛筆消しゴムの問題と特に大きな違いはありません。初めの問題と二つ目の問題の2問を、どのように解いていくのか見ていきましょう。ポイントになる部分を太字にしていますので、特にそこを注意してみてください。3問目はとても単純に作ってみましたので、実際に自分の力で教えるポイントを抽出する練習に使ってみてください。
問題の解き方
代入法
「1本80円の鉛筆x本と、1つ100円の消しゴムy個を買ったら、1780円だった。そして鉛筆と消しゴムの合計は20個だった。さて、それぞれいくつずつ買っただろうか?」
まずは式を作らなければなりません。ここで論じられているのは、値段の話と個数の話です。どちらも合計のものが分かっているので、合計の値段を出す式と合計の個数を出す式を作りましょう。xとyはそれぞれ求めなければならない、買った鉛筆と消しゴムの個数です。
すると値段の式は、
80x+100y=1780
となり、個数の式は
x+y=20
となりますね。では、これを解いていきましょう。
連立方程式の解き方は、大きく二通りありましたね。代入法と加減法です。この問題では代入法をやってみましょう。
x+y=20
の式からyを移項して、
x=20-y
とします。yを含んでいるので確定は出来ませんが、これによってxとは何かが分かりました。
この式におけるxは、今移項した式だけではなく、その前に作った値段の式にも存在しますよね。二つの式の間でxとyは同じものなので、このxを値段の式に代入します。すると、
80(20-y)+100y=1780
という式になり、もうこの段階での生徒には解くことが可能な問題になりましたね。
一応解答を進めますと、
20y = 180
となり、y=9である事が分かります。問題はyだけではなくxも求める物でしたから今度は、yをもとの二つの式から好きな方の式に代入しましょう。とはいえ、通常は簡単な式の方に代入します。
x+9=20
よって、xは11ですね。
こうして、「鉛筆は11本、消しゴムは9個」という答えが導かれました。と同時に、式が二つで、正答を一つに絞る事が出来る事も確定したことになりますね。こうやって問題を一つ以上解いてから、「できたでしょ?」とするのが最も身近な段階で原理を理解できると思います。文字が増えると式が増える事もこの時触れられると良いでしょう。求める文字の数と、正答を一つに絞る為に必要な式の数は一緒だと教えましょう。
加減法
では、二問目です。「ある広場を1周すると22kmある。そのコースを初めは自転車で走り、途中から自転車を置いて徒歩で進んだ。結果、1周するのにかかった時間は2時間半だった。自転車で走る速度が時速16km、徒歩の速度が時速4kmであった時、自転車で走った距離と徒歩で進んだ距離とをそれぞれ求めなさい」を解いていきます。
今度は加減法を使いましょう。
加減法でも同じようにまずは式を作りますね。この文章が言っているのは時間についてと距離についてです。
なのでまずは時間についての式を作りましょう。xとyはそれぞれ自転車で進んだ距離と徒歩で進んだ距離です。作るべき式は、自転車で進んだ時間と徒歩で進んだ時間を足したら二時間半であった、というものです。距離÷速さ=時間ですから、
(x/16) + (y/4) = 5/2
となります。もう一つの式は距離についてです。こちらは簡単ですね。二つの方法での移動距離の合計は22km、という事ですから、
x+y=22
というそのままの式です。さて、この式を加減法で解いていきましょう。
初めに一つの式で解いてみて解けなかったのを思い出してください。あれは情報が不足していたからでした。加減法は、得た情報をそのまま使うのではなく、少し形を変えて使う方法です。連立ではない一次方程式の時を思い出してみましょう。分数が出てきたりした時、両辺に同じ数をかけて都合の良い状態を作ったと思います。その方法は連立方程式になっても使う事が出来ます。イコールで結ばれているという式の関係性さえ崩れなければ良いのです。
という事で分数を含む式から分母を消すために、両辺に16をかけます。そしてその後の作業がやりやすいように、xかyのどちらかの係数の絶対値が揃うように式を等倍します。何故かの説明は解きながら説明してあげてください。今回の場合は16をかければxの係数が両式とも1ですから、これ以上いじる必要はありません。さて、これで
x+4y=40(式1)
という式が出来ますね。そしてそれと最初からある
x+y=22(式2)
を、併せて考えます。式1から式2を引いてみましょう。ここで係数を揃えた理由と、もしも絶対値が同じ係数の正負で分かれている場合は式1と式2を足すのだという事を教えておきましょう。数字を一つ消さなければならないからですね。そうなるような問題をこの後に使ってちゃんと教えてあげるようにしましょう。
引き算をすると、左辺は3y、右辺は18になり、これがイコールで結ばれている筈です(上の筆算参照)。
よってyが6である事が分かります。ここまで出来れば、あとは代入法の時と同じようにxも求めます。x+y=22ですからxは16です。
よって解答は「自転車で走った距離が16km、徒歩で進んだ距離が6km」です。
代入法と加減法は、ともすると全然違う事をやっているように見える物ですが、その根本的な部分は「文字が二つあって解けない方程式を文字が1つの状態にして解けるようにする」ものです。それが分かれば、加減法も代入法もそんなに悩まずに進める事が出来るでしょう。
連立方程式までくると数学らしく、考える事が段々と増えてきます。躓いてもその後どんどん問題が難しくなっていくだけなので、早い段階で理解にこぎつけるようにサポートしていってください。
運営部おすすめ記事
理系のあなたに!国語ってどうして勉強するか知ってますか?
【塾講師必見】国語の教え方はこれだ!そもそも国語って何を教えるの?