「比較」の三単元~各ポイント~
今回は比較についての指導法を紹介します。比較と言っても、この単元の中にさらに三つの単元があります。簡単に言うとas~as構文、比較級、最上級、この三つです。
これらは正直覚えやすいものが多く簡単です。
ですが、各単元に意外と複雑な文法が潜んでいます。
それが分からないため、点数が伸び悩んでいる生徒は多いと思います。
そこで基本的なことにふれつつ、複雑な部分を紹介し、またその指導法を説明していきます。
では、まずは各単元の説明にはいるまえに、講師の方に「生徒に比較文法を指導する」にあたり必ず意識させたいことを紹介していきます!
各単元について指導する前に・・・
まず生徒に印象づけていただきたいことは、比較はとても簡単な文の構造をしていると言うことです。下の例文を見てください。
I am as tall as Tom.(私はトムと同じくらいの背の高さです。)
文頭から行きましょう。
主語+動詞+比較表現(as~as/比較級/最上級)
英文の基本は主語+動詞+目的語ですね。その目的語の部分に比較を表すものがくると指導すると生徒はとてもわかりやすいと思います。ではこれをふまえて各単元のポイントとなるところを説明していきます。
as~as構文のポイント
まずはas~as構文からです。この単元でのポイントは複数ありますが、まずは一番重要なものから紹介していきます。それは何かというと、意外にも「否定文」です。
as~as構文の否定文
as~as構文の否定文を正確に理解している生徒は意外にも少ないです。
それはなぜかというと、他の否定文と少し訳が異なるからです。
「否定文」と言ったら、訳すときに「肯定文の訳の文末にないとつけるだ」けで簡単です。
今までで出てきた否定文を最初にとりあげ、違いを明確にさせましょう。
<例文>
[肯定] I play soccer.(私はサッカーする。)
⇩
[否定] I don't play soccer.(私はサッカーしない。)
[肯定] She can swim.(彼女は泳げる。)
⇩
[否定] She can't swim(彼女は泳げない。)
・・・・・
ではas~as構文はどうかというと、
[肯定] I am as tall as my brother.(私は兄と同じくらいの背の高さだ。)
⇩
[否定] I am not as tall as my brother.(私は兄ほど背が高くない。)
このような「~ほど~ない」と訳すのが出来ない生徒が多いです。
ついつい先程挙げた普通の否定文のような訳にしてしまうのです。このas~as構文の訳の仕方も比較的簡単です。
まず、主語「私は」、その後に続くのは、主語の比較対象「兄ほど」、そして、何を比べるのか「背の高さ」なので訳の仕方でつまずく生徒はいないと思います。
問題は否定文の訳の際に、比較対象の後に<~ほど>が出てくるかどうかです。これは大まかな印象で生徒に覚えさせましょう。
as~as構文の訳は、肯定文と否定文は同じくらい短い、これを生徒に繰り返し言って下さい。複雑なものではなく、ただその知識が出てくるかどうかというときは、大まかな印象で覚えさせるのが一番です。そうすれば間違った訳し方をしたときに、なんとなく違和感を感じるはずです。
I am as young as you.<私はあなたと同じくらい若い>
I am not as young as you.<私はあなたほど若くない>
I am not as young as you.<私はあなたと同じくらい若くはない>×
何処に挿入すればいいのか
比較と言っても、「こっちの方があっちよりも優れている」、「同じくらい」などのようなシンプルなものばかりではありません。
「私の方が三倍あなたより飯を食べる」「去年より二倍多く今年は働いた」などのような「何倍~である」、という表現は日本語でも使いますよね。
as~as構文で生徒がつまずくところがこの箇所な中にあります。
~倍という表現の表し方は簡単です。「数字+times」と表します。
ただ二倍だけはtwice、この部分は絶対に注意させてください。
ですが、一見これさえ注意すれば、どうってことない単元のようにも思えます。
では何を生徒はよく間違えてしまうのか。それは「比較表現」を文中に挿入する場所です。
表現の仕方を知っていても実際に文中で使えなければ意味がありません。講師の方はこのような程度を表すものが出てきたら、表現方法、注意事項(ここでは二倍はtwiceと表すこと)だけでなく、その表現が文中のどの箇所に入るのか、そこまで徹底して教えるようにしてください。
This brigde is[ three times ]as long as that one.
(この橋はあの橋の三倍の長さがあります。)
比較構文の構造はいたってシンプルであることはもう最初の部分でお分かりいただけたと思います。
「主語、動詞、そして比較の表現」の順番です。
そして程度(~倍)を表す表現は主語と比較表現の間に常にくると指導してください。
このように例文を一つ書かせて程度を表す表現を囲わせて、位置を強調しながら指導していくと生徒もとてもわかりやすいと思います。
訳にも注意
また訳に関して生徒に注意させてほしいことがもうひとつあります。
先程の例文に注目してください。t
hat oneをあれではなく、あの橋と訳しています。
・・・・
そうです。ここでは直訳はだめなのです。
比較とは何かと何かを比べるものです。なので主語はもちろん、比較対象も明確にしなければなりません。この橋とあれ、英語ではoneを名詞の繰り返しを避けるために使われます。
なので、訳の際にも生徒はそうしてしまう傾向にあるのです。ここが言語の違いです。
直訳では通用しないところがあるのは仕方のないことなのです。違う言語を日本語に完璧に直訳することは不可能であることをこれを機にしっかり伝えましょう。
oneは先程言ったように名詞の繰り返しを避けるものとして使われるので、外国の方はこのように言われても橋と橋をくらべていることが理解できます。
しかし、日本語の「あれ」とはいろいろなことを指します。
もしかすると橋と同じくらいの長さの川を指しているのかもしれませんし、ビルを指しているのかもしれません。橋と橋を比べていることが少し不明瞭になってしまうのです。
なので、減点されてしまいがちな箇所なのです。訳の際は常に、いったい何と何を比べているのかをはっきりさせるように指導しましょう。
確認問題
では、これまでのことを生徒がしっかり理解したかを確認できるお勧めの確認問題を紹介します。これはそのままテストに出る可能性があるほど頻出度が高いものなので、ぜひ使ってみてください。その確認問題はこれです。
<並び替え問題>
[I/as/Ken/CDs/have/many/as]
(私はケンと同じくらいの数のCDを持っています。)
語順、比較の文の構造をしっかり理解しているかは、この問題を解けるかどうかでよくわかります。よく生徒がやってしまいがちな誤った回答はこれです。
I have CDs as many as Ken.
この文は口に出してみると語呂もいいですし、正解のにおいがプンプンします。ですがこれは違います。最初に言ったように比較表現の文は主語、動詞、比較表現です。この解答だと主語、動詞、名詞、比較表現になってしまいます。CDsの位置を間違える生徒がとても多いのです。名詞の位置を指摘すれば、他に入りそうな箇所は一つしかありません。よって答えは
I have as many CDs as Ken.となります。
比較級のポイント
比較級でのポイントもほぼas~as構文と同じです。比較と言っても上か下かのようなシンプルなものではありません。
たとえば、この問題の方がずっと難しい、俺の方があいつより少しテストの点が良かった、などと優劣の程度を表す言葉を日本語でも使います。
この<ずっと>はmuchで表し、<少し>はa littleで表します。
少しの方のa littleではaを忘れないように注意させましょう。
それさえ注意すれば、二つしかないので覚えるのに苦労はしないと思います。
問題はどこにこの表現を挿入するのか。これもas~as構文と同じ位置、動詞と比較表現の間になります。比較を教えるにあたり、文の構造に視点をあてて指導するとこんなにも簡単なものになるということを分かっていただけたでしょうか。
では確認問題です。根本を理解していれば簡単にできるはずです。
ジャックはケンより二歳年上です。
[Jack/Ken/older/years/than/two]
答えは、Jack is two years older than Ken.となります。まず主語、その次に動詞、そして、程度を表す表現を入れ、後は比較表現です。簡単ですね。
今回はここまでにします。次回の記事では、最上級のポイントを紹介していくので、興味のある方は読んでみてください。この記事を一人でも多くの講師の方に役立てていただければ幸いです。