一次関数の応用問題
先日……といっても結構前の事ですが、「数学理解:一次関数[基礎]」という記事を書きましたが、今回は基礎の次に入ります。
つまり応用ですね。基礎から応用に入ると、当然問題は難しくなります。
難しくなるというのは、「考えなくてはならない事が増える」という意味です。
筆者自身も、「一次関数がこんな問題を出してくるなんて!」と当時驚いた記憶があります。
というか、しばらくはそれが一次関数の範囲の問題だと認識さえしていなかったかもしれません。
生徒達もきっと、苦手な人は特にどんどん分からなくなっていく段階に差し掛かる頃でしょう。
このあたりまでくると「数学」って感じが強くなってきますよね。
しかしそれでも、中学数学の中では一次関数は基礎の範囲です。この後2乗に比例する関数、という分野に入ってしまえば、一次関数は当たり前のように知っているものとして扱われます。
そこで応用問題を扱っていきたいのですが、応用というからには様々な使われ方をします。
ですので本稿ではその中の一つ、『グラフによって描かれた図形の面積』の問題について扱います。
何故なら、応用問題として出題される中ではこれが最も直感的に理解できる範囲だと考えているからです。
何しろ、求める物が面積で、視覚的に認識しやすいものですから。
そうはいってもこの内容は応用分野です。
生徒が既に一次関数の基礎を学習、理解している事は勿論の事、連立方程式も含みますのでそちらの理解も前提としています。
これらをまだ理解していない生徒に、この範囲を扱わせるのは控えましょう。
一次関数のグラフの図形とは?
そもそも、グラフの問題を扱っていたはずなのに図形とはどういう事なのか、と思う生徒もいるでしょう。
そういう憤りは、一次関数とは何かをしっかりと理解しているからこそ生まれる物です。
通常、図形と結びつく様なものではないですからね。
勿論先生方はご存じの通り、グラフの直線によって平面上に図形を描いたものですね。
口で説明するよりも、適当な一次関数の直線を引き、x軸とy軸とグラフの直線とで三角形を作りましょう。
それを見せた方がずっと早いでしょう。
例題を二つ用意しました。考え方の基本になる簡単な問題と、それを発展させた問題です。
- x軸とy軸と、「y=2x+6」で囲まれた図形の面積を求めよ
- 「y=x+1」「y=-2x-4」「y=3x-5」で囲まれた図形の面積を求めよ。
大方の問題は、このような感じです。
直線3つで三角形を作る事が多いですが、場合によっては四角形を作る事もあります。
解き方は同じですので、同じように教えてあげてください。
「x軸とy軸と、「y=2x+6」で囲まれた図形の面積を求めよ」
ということで、早速ですがこの問題から解いていきます。
まず、この問題は図形の面積を求める問題ですから、実際にグラフを書いてみる所から始めましょう。
すると下の図のようになりますね。
青色で塗られているところが面積を求めたい図形になります。
何故図形を描くのかというと、「この状態からあと何が分かれば面積を求められるか」を自分で理解する為です。
図形を描いた事で求めるのは三角形の面積である事が分かります。
三角形の面積は「底辺」「高さ」が分かっていれば求められますから、それらが求められるかどうかを考えましょう。
今回の場合は、底辺は「グラフの直線とx軸の交点」、高さは「グラフの直線とy軸の交点」であると言えますから、このようになります。
これで、三角形の底辺と高さが求められましたから、当然面積も求められますね。
答えは9です。
グラフを使った図形の場合、長さの単位は使わない事が多い事も併せて教えておきましょう。
では、基礎的な考え方を学んだところで応用問題に入っていきます。
先程は3つの直線のうち二つが元々存在するxy軸でしたから交点や、そこから求める底辺や高さを求める事が容易でした。
今回はそうはいかない、すこし手間のかかる問題となっています。
「y=x+1」「y=-2x-4」「y=3x-5」で囲まれた図形の面積を求めよ。
グラフの数が増え、複雑になったのは一目瞭然です。
ですが、複雑になったとはいってもやる事は変わりません。グラフの中に書かれた図形の面積を求める、という部分は何も変わっていません。
ですから、まずはどのような図形の面積を求めるのか、把握する必要があるのも同じです。
グラフ三つは、このように書くことができます。
面積を求めたい図形は同じく青く塗られているところですね。
しかし、ここで問題が起こります。
求めたいのは面積ですが、この三角形では底辺や高さを求める事が非常に困難です。
勿論、不可能ではありません。
それぞれの辺を斜辺とする直角三角形を書き、三平方の定理を用いてそれぞれの長さは求められますし、高さは底辺と定義した辺の向かいにある角の点を通る底辺に平行な直線までの距離を求める事で解決しますが、これは良策であるとは言えません。
数学が苦手な生徒にとっては、ですが。
すこし計算が複雑になる上に計算の量も少なくはないので、どこかで一度ケアレスミスをすればそれで正答は出来ないという難点故です。得意な生徒にはそこまで困難ではないでしょうし、このやり方でも良いかもしれません。
さて、では苦手だという生徒はどうすれば良いでしょうか。苦手だからできませんという訳にはいきませんよね。
そこで生徒達誰にでも出来るやり方を教える必要が出てきます。
その為にはまず考え方から教えていきましょう。
まずは三角形の角3つを通る長方形を考えます。
この長方形から、求めたい三角形以外の部分を引いてしまえば求めたい面積が出せますよね。
図にすると分かりやすいでしょう。下図のようになります。
とすると、求めるのに必要なものが浮かび上がってきます。
周りの赤い三角形の面積に必要な、それぞれの底辺と高さを求めればよいのです。
これらはxy軸に沿っていますから、求める事が容易になるのです。
とはいえ、どの辺も始点がxy軸に接してはいませんから、ぱっと見てすぐに分かるという訳にはいきません。
ですから、次は三角形の角でもある、グラフの交点を求めていきます。
グラフの交点とは、「二つのグラフが同じ値を取る」点の事です。
つまり、「その点のx、yの値においては、グラフは二つとも成立する」、という事を意味しています。
そのxyが分かればその座標が交点である、という事になりますので、y=ax+bの内、a、bが分かっていて(明かされているグラフの式により)、x、yが不明な二つの式のxとyを求める方程式によって求まります。
回りくどい言い方をしましたが、つまり連立方程式です。
一次関数の範囲の外の話ですので詳細は省略しますが、連立方程式によって3つの交点が求まります。
すると、下図のようになります。
座標において、高さはy軸の差、横はx軸の差で求める事が出来ますから、これらの情報が出そろえば赤い三角形の面積をそれぞれ全て求める事が可能になります。
そしてそれは同時に青い三角形の面積を求める事も可能になったという事です。
座標を見ながら、長方形の縦と横を求めるのは簡単ですね。
座標の右端のx座標から左端のx座標の数字を引いたものが横の長さで、一番上の位置にあるy座標から下にあるy座標の数字を引いたものが高さです。
以下おまけ
数字がややこしいので回答はおまけとします。ここまでの文章で十分回答する事が出来る筈です。
今回の場合は、
横: 4-(-2) によって 「6」
縦: 6-(-24/5)なので 「54/5」
となります。なので長方形全体の面積は「324/5」となります。
そこから三角形を引きますので、同じように交点座標からそれぞれの底辺と高さを求めて面積を出しましょう。
三角形: 12+(144/25)+(486/25)=930/25
となります。
求める三角形は長方形から赤い三角を引いた分ですから、
(324/5) - (930/25) = 690/25
となります。綺麗に整数が答えになる問題を作る人たちは大変ですね(汗) 筆者もここまで面倒な計算になってしまうつもりは無かったのですが。
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