学習の記録をどうつけるか?
社会科は、問題演習に入る前の段階でいかに知識をしっかり定着させておくかということが、
その後の得点に大きく関わってくる科目です。
塾講師の皆さんも、地歴・公民などの学習の中で、
様々な形式のノートやプリントを利用してきたと思います。
生徒の目線からすれば、
授業で学習の内容を先生がわかりやすく解説し、残した板書を、
復習しやすいようにノートに記録をする。
これが学習ノートの主な役割の1つであると言えるでしょう。
しかし、塾講師として、実際に授業をするとなると、
板書と説明のバランスをどうするべきか判断が難しい!
という声をよく聞きます。
社会科講師の方に限らず、集団指導を行う講師の皆さんは常々感じていることかもしれません。
板書というのは、早く書くにも、生徒が読みやすい文字でなければいけませんし、
たった数行の記述でも意外と時間がかかるものですよね。
そこで、時間を効率よく使うために、
文字数を最小限にするための矢印、下線、図などを用いていくわけですが、
やはり、社会は生徒に理解させたい知識も多いのでそれなりに時間がかかってしまいます。
そうしたことへの対処法として、
穴埋めのプリントを事前に準備しておく方も多いのではないでしょうか?
後ほど詳述しますが、
実は穴埋めのプリントにもその功罪とも言うべきデメリットがあります。
最終的にどの学習記録を選ぶのかは、皆さんの裁量次第ですが、
本稿では、塾講師の皆さんに、
学習記録のスタイルで、どのような利点や弊害があるのか
を考えることが出来るような情報を提供します。
板書のスタイル
まず、社会科における板書のスタイルとしては大きく分けて以下の2つがあります。
①学習内容網羅型:白紙のノートにタイトル、テーマ、学習内容を網羅的に全て記述するタイプ
②穴埋め解答記述型:穴埋め式のプリントの解答を埋め込んでいくタイプ
他にも、大学の講義のようにパワーポイントで授業を行う方もいるかもしれませんが、
その場合も上記の②のタイプの1つとして考えていきたいと思います。
これからそれぞれのスタイルの特徴とメリット・デメリットをご紹介していきます。
①学習内容網羅型
①の学習内容網羅型の板書スタイルです。
まずは、こちらのノート(実物)を御覧ください。
<特徴>
このノートは筆者が実際に授業で「55年体制」を教える際に、準備したノートです。
授業での板書もまさにこれと同じ内容を記しました。
このように、
白紙のノートにタイトルを書くところから、1つ1つ授業の内容を説明しつつ要点を記録していくことが、
このノートの大きな特徴です。
メリット
この板書のメリットは、
テーマを書くところから1つ1つ内容を頭に入れながら書き込んでいけるところ
です。
入試では、よく問われるような重要単語(色を替えたりマーカーで示すような部分)以外に関しても、
その関係性や因果関係などを問われることがあります。
このタイプのノートであれば、
そうした点を生徒が1つ1つ「なるほど」と授業の中でしっかりのみこんでから書き記すことが出来ます。
(もちろん、それに伴う授業力も必要です)
※参照:生徒を授業に飽きさせない方法とは!?~社会科を例として
そして、書くことを通して1つ1つ細かい部分まで意識が行くため、
つながりや因果関係がわからないところに生徒が気が付きやすいという利点もあるのです。
デメリット
デメリットは、やはり、
板書の時間が非常にかかること
です。
塾は、その性質上どうしても学校ほど授業の時間、時数を確保するのが難しい状況にあります。
仮に多めに授業時数を設定したと行っても、
生徒にとっての社会科のニーズは、英語や数学、国語などの主要科目に比べると、そこまで大きく無いといえるでしょう。
そういった点を踏まえると、
限られた時数の中でも最大限の効果を発揮しなければならない塾講師にとって、
効率性に欠けるのはデメリットといえるかもしれません。
②穴埋め解答記述(要点記述)型
次に②の穴埋め解答記述型です。
こちらもまずは、プリント(実物)を御覧ください。
<特徴>
このプリントの特徴は、
優先順位の高い用語や説明を穴埋め式にして生徒にそのプリントを渡しておく形式だということです。
こうした穴埋め形式を利用しますと、板書は以下のようになります。
メリット
このタイプの最大のメリットは、
あらかじめ必要事項を講師がプリントに書いておくことで、
板書の時間を大幅に減らすことができること
です。
先ほど述べた、授業時数が少ない場合でも、短い時間で一気に学習内容を進めることができるのです。
また、本当は授業で扱いたいけど時間の関係上扱えない、そんな学習内容のことも作成の段階で活字にしておけば、授業において簡潔にでも触れることが可能になります。
デメリット
デメリットは、2点あります。
1つは、
1つ1つの因果関係を生徒が自分で書く必要がなくなってしまうこと
もう1つは、
空欄以外の活字の部分への意識が薄くなってしまうこと
です。
もちろん、
・生徒がしっかりノートを読み込み
・講師が書き込んでおいた空欄以外の所も、しっかり理解している
という状態であれば問題はありません。
しかし、本当は自分の言葉で説明できるか怪しいけれど、
”プリントに書いてあるからとりあえずこういうことか”と、
わかった気になってしまったり、説明を聞き流しやすくなることも事実です。
このタイプは授業を進める上では便利なのですが、
その進行のスピードが早くなる分、
生徒の理解が上滑りになる可能性があることもしっかり意識するようにしましょう。
まとめ
ここまで、授業における学習記録のつけ方の種類、そのメリットとデメリットをご紹介しました。
筆者が受験生時代に塾で社会科を学んでいた時もそうでしたが、
おそらく塾講師の方は②のタイプを利用している方が多いのではないでしょうか。
特に新人講師に多いのですが、授業のプリントを一生懸命作っている人を見かけます。
授業に向けた準備はとても重要なことですし、
自分にしかないオリジナルなプリントを作れれば、学校の授業や参考書と差別化を図ることができるでしょう。
しかし、本当に大事なのは、
生徒がそれを利用してしっかり理解出来るかどうかということです。
自分が学習者であったらこのタイプのノート、もしくはプリントで学習しやすいだろうか?
情報を詰め込みすぎて要点がつかみにくくなっていないだろうか?
こうしたことを考えながら、授業用のノート、プリントを自分なりに作っていただけたらと思います。
決して簡単なことではないのですが、生徒の学力やレベルに柔軟に対応していく。
これこそが塾講師の力量を問われるところでもあるのです。
レジュメを利用して、利用しない授業
最後にその具体例を紹介して本稿の締めにします。
筆者が務めていたのは、国公立大学を目指す生徒が多い塾でした。
国公立大学は主に論述が出題されるので、
歴史の細かい知識よりも、因果関係をしっかり理解する力が必要になります。
授業時数をそれなりに確保できたこともあり、筆者は、先述した①の内容網羅型で1年間授業指導しました。
その時、筆者は授業の冒頭で以下のようなレジュメも配りました。
これは「安保条約」を授業で取り扱った際に利用したレジュメです。
※参照:
・安保闘争とは何だったのか?経過をわかりやすく説明します!!
授業では、
この9項目を上から順番に説明していき、板書を①で紹介したような形で書いていきます。
そのとき、このレジュメには何も書き込まないように指示し、
授業の復習で、このプリントをもとに親御さんや兄弟に説明することを宿題に出していました。
講師の皆さんは常日頃感じていることかもしれませんが、
学習の内容を自分の言葉で説明することができなければ、学習内容を本当に理解しているとは言えない
ですよね。
論述問題への対策も含めて、こうした練習を日ごろから行うようにさせました。
その結果、教えていた生徒は、
「先生、このところがやっぱりよくわかっていませんでした。もう一回教えてもらえますか?」と
具体的な質問が出来るようになったのです。
あくまでこれは一例ですが、生徒の学力や目標に応じて、
最も有効な方法で生徒が実力をつけるにはどうすればよいかということをぜひ考えながら、
授業を作ってみてください。
長くなりましたが本稿は以上です。
皆さんのご活躍をお祈りしています!