係り結びの法則は中学の古文レベルでも現れる非常に基本的な古典文法の1つなのですが、意外によく理解できていない生徒さんが多いような気がします。ぜひ例文も交えてしっかりと理解させてあげましょう。
係り結びの法則……係助詞「ぞ、なむ、や、か、こそ」と文末の呼応
係助詞と呼ばれる「ぞ、なむ(なん)、や、か、こそ」が文中で用いられるとその文の文末が終止形ではなく特定の活用形へと変化します。これが係り結びの法則です。具体的に表にまとめると以下のようになります。
係助詞 | ぞ | なむ | や | か | こそ |
意味 | 強調 | 強調 | 疑問・反語 | 疑問・反語 | 強調 |
文末 | 連体形 | 連体形 | 連体形 | 連体形 | 已然形 |
ここで注意したいことが2つあります。1つ目は係助詞の意味の違いです。「ぞ」「なむ」「こそ」は強調であるのに対し「や」「か」は疑問・反語の意味です。ちなみに強調は現代語に訳すときに反映させる必要はありません。これらの意味の違いを、後に具体的に例文をあげることで示してみましょう。
2つ目は文末の活用形についてです。「こそ」のみ已然形で結びますが、他の係助詞は全て連体形で結びます。「こそ」の結び方を間違えるパターンをよく見るので特に注意しましょう。
さて、文法事項のみ説明されてもよくわからないと思いますので具体的に例文を見てみましょう。
例文で理解する係り結びの文法法則
例文1:雨降りけり(雨が降った)
文末の「けり」は過去の助動詞で終止形です。この文には何も係助詞が使われていないため文末の結びは終止形となっています。このように文を終える活用形のことを終止形と言います。
この文に強調の係助詞が加わると、このようになります。
例文2:雨なむ降りける 雨ぞ降りける 雨こそ降りけれ(雨が降った)
文末が変わったことにお気づきいただけたでしょうか。これが係り結びの法則です。「なむ」「ぞ」の結びは連体形、「こそ」は已然形となっています。ちなみに、強調の度合いは左から順に強くなっています。つまり、「なむ」より「ぞ」、「ぞ」より「こそ」の方が強調の度合いは強いです。しかし前述のように強調は特に訳出する必要がないのでそれほど気にする必要はなく、頭の片隅に留めておく程度でいいでしょう。
続いて、疑問・反語の「や」「か」が文中に入るとどう変化するのか見てみましょう。
例文3:雨や降りける 雨か降りける(雨が降ったのか)or(雨が降ったのか、いや降っていない)
「や」「か」が使われると文末はこのように連体形になります。訳は、左側が疑問、右側が反語の場合です。
反語の訳し方に注意しましょう。「~か、いや~ない」と一度疑問で受けてそれを否定で返し、結果として否定の意味を強調する訳し方のことを反語といいます。これは古典独特の訳し方なのでしっかりと覚えましょう。ちなみに疑問か反語かを判断する確実な方法はなく、文脈によって判断するしかありません。疑問なのか反語なのかで文意が大きく変わってしまうので、「や」「か」が現れた場合は慎重に読み取りましょう。
「や」「か」は文末に移動している場合があります。これを見ると文末が連体形になっていることに自然と納得できると思います。
例文4:雨か降りける→雨降りけるか 雨や降りける→雨降りけるや
このような文は現代語「雨が降ったのか」と同じ語順なので疑問、反語であることがよりわかりやすいと思います。
活用形の簡易判断法
例文では「けり」の変化を取り上げましたが、「けり」はこのように変化しました。
終止形…けり、連体形…ける、已然形…けれ
このように、大体の言葉は終止形は「~り」、連体形は「~る」、已然形は「~れ」で終わります。このような活用をしない言葉もありますが、係り結びの法則をしっかりと理解するにはまずこの活用の仕方を覚える必要があります。逆に言えばこれが押さえられれば係り結びの文末を判断する問題は大丈夫です。まずは係助詞を覚え(ぞ、なむ、や、か、こそと何回か唱えれば覚えられると思います)、意味を覚え、文末が何になるかを覚えれば(「こそ」のみ已然形です!)係り結びの法則はばっちりです。
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