高校受験が終わると…
高校受験が終わると、塾の雰囲気は一気に柔らかくなります。受験が終わった当の本人たちは、遊びや高校のことで頭が一杯になっています。進学先の高校が多めの宿題を出してくれていたりすると好都合なのですが、大体はそれも無く気が抜けてしまっています。何年か努めている先生方なら、この期間、一度は悩んだことがあるのではないでしょうか?
高校入学後も塾を続けてくれる子もいれば、月末でやめてしまう子もいます。とはいえ塾にいるうちは、意味のある授業を公平にしてあげる必要があります。これは家庭教師でもまったく同じことです。
今までに塾内で個別指導・団体指導の両カリキュラム作りを任せていただいた経験を基に、高校へ向けてやっておくべきことを幾つか纏めてみます。「意外と盲点になっているが、抑えておくべきポイント」であると言えるでしょう。もし、その期間のカリキュラム作りに悩んでいる方がいれば是非ご覧ください。
また、今回は品詞についての指導のポイントをまとめておりますので、上記期間以外でも活用して頂けると思います。そして、あくまでも通常の品詞、文型指導というよりも、高校へ向け、それらに慣れ親しんでもらえるための指導方法ですのでご考慮ください。
実はこんなことが分かっていない!
多くの塾では教科書準拠型ワーク、独立型応用ワークを使って授業を進めていると思います。英語の場合は、生徒の実力に合わせた長文読解専用のワークなどを適宜使うことが多いでしょう。
更に言えば、大手進学塾は熟語や単語に特化した本を暗記宿題として利用し、授業で読解練習を扱う場合が多いように感じます。
このように受験対策してきた生徒の何が足りないのか?
英検準二級等を取得している生徒についてもこれは共通して言えることです。
それは、品詞に対する理解です!(ついでに言えば辞書の見方)
高校生の英語を指導しているときにも、これはひしひしと感じます。様々な修飾が出てきて、文型理解を深めようとしても、品詞理解がある程度出来ていないと先に進めません。身の回りにいる講師方も、中学生を教える時にその単語の品詞が何であるかの解説はしているのですが、本当に理解できているかは別問題です。単語そのものの暗記が出来ていれば点は取れますので、そのうち品詞に言及することも少なくなってしまいます。
そんな状態で高校に入っても、戸惑い、理解が追いつかないという可能性さえ考えられます。
つまり、受験終了後の期間こそ、中学と高校を繋ぐ大切な期間であるといえるのです!
だからこそ、「品詞を理解していないと高校で困るぞ」と、少し発破をかけることで危機感を与え、この時期を大切にさせましょう。そうすることが塾自体の緊張感を高め、高校への不安感を払拭させることにも繋がります。
生徒の品詞に対する理解を確かめてみましょう!
生徒の理解がどのレベルのものであるか、まず見極める必要があります。通常の品詞や文型の教え方の流れはこのようなものでしょう。
~まず8個の品詞の解説する~
①名詞…人、ものや事柄を示す語
②代名詞…名詞の代わりとして用いられる語
③形容詞…名詞を修飾する語
④動詞…主語の状態、動作を示す語
⑤副詞…動詞・形容詞・副詞又は文全体を修飾する語
⑥前置詞…名詞・代名詞の前で用いられる語
⑦接続詞…語と語、句と句、節と節を結びつける語
⑧間投詞…感情を表す語
~文の要素を解説する~
・主語(S)…名詞・代名詞
・動詞(V)…動詞・助動詞+動詞
・補語(O)…名詞・代名詞・形容詞
・目的語(C)…名詞・代名詞
・修飾語…形容詞・副詞
勿論、これらは正しく理解させる必要があります。しかし、生徒によってはこれらを示しても混乱してしまい、レベルが計れない場合もあります。むしろ通常の授業でもこの教え方から入ると、品詞や文型という言葉に拒絶反応を示すようになったりします。この一覧をそのまま暗記させるのではなく、まずこういった分類がされているというところだけ認識させ、ぼんやりとしたイメージを明確にさせるような指導にする必要があります。
まったく分からないという生徒に対しては以下の順序で理解させるのが良いでしょう。生徒のレベルに対応して、指導の参考にしてみてください。
①日本語から品詞分類と5文型を確認する!
日本語から品詞の理解が出来ていないと、英語の品詞も理解できません。当たり前のことですが、日本語と英語を結び付けてあげるだけで、理解がぐっと深まります。
簡単な英文を和訳
I bought him a green car.→私は彼に緑の車を買った。
日本語から名詞、動詞、形容詞、副詞、助詞、助動詞、接続詞を順に抜き出させてみます。今回のような英語の授業では、更に絞って名詞、動詞、形容詞、副詞程度で良いでしょう。そして、ポイントはその抜き出した日本語をまた英語に直して文を再構築することです。再構築するときに、日本語の語文型がどう並んでいるのか、要素に直してからパズル感覚で確認させましょう。
日本語から品詞の抜き出し
名詞→私(I)・車(car)・彼に(him)
動詞→買った(bought)
形容詞→緑の(green)
英文の要素にまとめる
主語(S)私は→I
動詞(V)買った→bought
目的語(O)彼に→him
目的語(O)緑の車を→a green car
英文に直す
(S)I (V)bought (O)him (O)a green car.
この流れで作業させて見ましょう。そうすれば、最後の英文がSVOO文型であること、それぞれの品詞が何であるかを理解できているはずです。あえて始めは補語の出てくる例文にせず、目的語の綺麗な文型が望ましいです。目的語と補語の違いは補語が目的語について説明しているかが問題ですが、それは始めに説明しない方が良いでしょう。
上記の流れで日本語の品詞分類、英文の要素へのまとめ、英文の再構築が一人前に出来るようになって初めて、説明してあげるようにしましょう。
日本語の品詞分類が出来ていれば英語の品詞も理解できるはずです。その関係性が単純であると説明してあげることが生徒の安心へと繋がります。
②品詞を変化させるゲーム
上記の流れで品詞と5文型の理解が追いついてくれば、次第に単語の多様性に気づいてくるはずです。この時、辞書の使い方・理解向上に繋がる作業をさせます。高校生になると(大学受験に向けて)辞書を使う機会が増えます。そんな生徒のために、辞書の見るべきポイントを指導してあげましょう。あくまでも、意味を確認するだけではなく、下記のことをしっかり理解しないと伸びないということを伝えましょう。
品詞
まず品詞が何であるか確認させましょう。上記の日本語和訳したときの品詞の判断が正しかったかを確認することも出来ます。
派生語
今回のゲーム形式で最も重要であり、大切な部分です。
(発音記号)
今回は直接必要ではありませんが高校では頻出であると言っておきましょう。
この3つをしっかりと確認させる癖をつけるために、ゲーム感覚で辞書を引かせる練習をさせましょう。例えば、valueという単語が出てきたなら、辞書で調べた際に派生語を確認させ、すでに知っている単語があれば書き出させます。
・valuation 名
・valuable 形
・valuate 動…
知らない単語があればその意味と一緒に書き出させます。この動作が、簡単に品詞を理解し英語習得のスピードを高めるもので間違いありません。単語の後ろの形(ation able ate)といった形が、品詞の変化に対応しているということを感覚的に理解させてあげられるように、単語を選んでいくことが大切です。
慣れてくれば、例文等を読む際にゲームとして単語を指差し、この単語の形容詞への派生語は?と話を振ってみましょう。勘で答えられるようになれば、かなり感覚が身についているはずです。
まとめ
①②に挙げた指導は、あくまでもその生徒が高校で苦労しないように背中を押してあげられるものです。インターネット等でも、品詞や文型についてまとめてあるものは多くありますが、苦手意識を植え付けないための指導法はなかなかありません。高校受験が終わった時期を筆頭に、品詞や文型をスムーズに身に着けるには、
・日本語と結びつける
・ゲーム感覚で慣れる
ことが必要であるでしょう。マンツーマンで指導することが多い塾や家庭教師の場合は、普段の授業とはまた違う感覚で取り入れることも出来ると思います。品詞も文型も慣れてみればなんて難しいこともない!そんな気持ちにさせて挙げられるように、この指導法が参考になれば幸いです。