「アベノミクス」ってなに?
数か月前からニュースや新聞などで
いわゆる「アベノミクス」が騒がれるようになり、
毎日のように株価の変動や為替レートについて
大きく取り上げています。
今回はそんなアベノミクスを
中学の公民や高校の政治経済の指導で
どのように取り上げることができるのかについて
紹介したいと思います。
金融政策と財政政策は何が違うのか?
現在行われている「アベノミクス」で
阿部首相は基本方針を
「3本の矢」
と表現しています。
それは、
- 大胆な金融政策
- 機動的な財政政策
- 民間投資を喚起する成長戦略
の3つです。
まず中学生の生徒にとっては
「金融政策」と「財政政策」の違いから
説明してあげる必要があります。
一言でいうと、
金融政策…日本銀行が主体で行う。
世の中(市場)に流れている
お金の量(マネーサプライ)を調整することで
景気や物価を動かす政策のことです。
財政政策…国家が主体で行う。
国が行う経済活動の収支についての活動であり、
最も有名な例でいうと公共事業を行うことです。
一本目の矢ー金融政策ー
金融政策には主に3つの方法があり、
- 公定歩合の変更
- 公開市場操作
- 支払準備率操作
です。
全部をまとめた図が上図になります。
今回のアベノミクスでは主に2の影響が強いので
2の公開市場操作について主に説明をしたいと思います。
ちなみに1の公定歩合の変更とは、
市中銀行(私たちが預金するいわゆる一般の銀行)が
日本銀行からお金を借りる時の利子の変更のことであり、
この公定歩合を下げると資金供給が増えて景気を刺激し、
逆にあげると資金供給が減り景気を抑制します。
3の支払準備率について、
まず「支払準備率」とは
金融機関(先ほどとりあげた市中銀行)が受け入れた預金のうち
何%を日銀に預け入れるかという割合です。
支払準備率が上昇すれば
市中銀行が日銀に預けるお金の量が増えるため
世の中に出回るお金の量は少なくなり、
逆に支払準備率が低下した場合には
世の中に出回るお金の量は多くなります。
公開市場操作とは、
日本銀行が市場で国債や手形を売買することで
市場にお金を供給したり、
回収したりすることを言います。
今回のアベノミクスでよく
「日銀が政府の発行する国債の約7割を購入し...」
といったことが聞かれます。
これは国債を日銀が買うことによって
その分お金が市場に流れます。
お金は貸したい側と借りたい側の二者がいるので、
増えた分のお金を貸し付けるために
お金を借りるためのコスト(金利)を
下げることになります。
するとお金を借りたい側(例えば企業)が
お金を借りて新たな生産活動を行うことになるため
雇用が増加し景気がよくなるという流れです。
二本目の矢ー財政政策ー
財政政策は先ほど説明したように、
国が行う経済活動の収支についての活動です。
こちらは政府が積極的に需要を拡大することで
需要拡大→企業の業績向上→雇用の増加→需要の拡大→...
という好循環を生み出すことで
景気の回復を図るものです。
アベノミクスでもこの効果を狙っていて、
2013年1月政府の閣議決定で
緊急経済対策10.3兆円の政府支出を決定しています。
このように財政政策と金融政策を組み合わせることを、
教科書に出てくる言葉でいうと
「ポリシーミックス」となります。
少し話が難しくなりますが
なぜこのようにポリシーミックスを実行するかというと、
もし財政政策のみを行うと
「クラウディングアウト」という現象が発生し
利子率が上昇してしまうので
他の一般の資金の借り手にとっては
ますます資金調達が難しくなってしまうという事情があります。
三本目の矢ー民間投資を喚起する成長戦略ー(※おまけ)
ここからはあまり科目の指導については
役に立たないのでおまけです。
興味のある生徒さんには
紹介してあげてもよいかもしれません。
ではいったいなぜアベノミクスは
三本目の矢を目標に掲げているのでしょうか?
今までに説明してきた二本の矢で十分に思えます。
しかし、この3本目の矢がうまくいかなければ
日本は最悪の場合財政破綻になりかねません。
重要なのは2点あります。
- 「資金供給を増やすと利子率が低下」というのは実は短期的に見たときの話であること
- 1本目の矢、2本目の矢によって"日本が借金を拡大させ続けているということ"
まず1に関して。
大学の授業で習いますが、
名目利子率=期待インフレ率+実質利子率となります。
先ほどの「資金供給を増やすと利子率が低下」というのは
物価が短期的には硬直的(動きづらい)という前提に即しています。
実は長期的に見ると
利子率(名目利子率と考えて構いません)は上昇するのです。
そんな中、3本目の矢である
中長期的な民間投資の促進が失敗すると
税収も増えず利子率も上昇しているということになって
国債の価格が大暴落します。
すると日本は国債を発行しても資金を調達できず、
2からわかるように日本は借金を増やし続けているので
借金が返済できず破綻となってしまいます。