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アベノミクスの仕組みを中学生・高校生に分かるように教えてみよう!

中学生

2021/12/17

「アベノミクス」ってなに?

数か月前からニュースや新聞などで

いわゆる「アベノミクス」が騒がれるようになり、

毎日のように株価の変動や為替レートについて

大きく取り上げています。

 

今回はそんなアベノミクスを

中学の公民や高校の政治経済の指導で

どのように取り上げることができるのかについて

紹介したいと思います。

 

金融政策と財政政策は何が違うのか?

 

現在行われている「アベノミクス」で

阿部首相は基本方針を

「3本の矢」

と表現しています。

 

それは、

  1. 大胆な金融政策
     
  2. 機動的な財政政策
     
  3. 民間投資を喚起する成長戦略

の3つです。

 

まず中学生の生徒にとっては

「金融政策」と「財政政策」の違いから

説明してあげる必要があります。

 

一言でいうと、

金融政策…日本銀行が主体で行う。

 

世の中(市場)に流れている

お金の量(マネーサプライ)を調整することで

景気や物価を動かす政策のことです。

 

財政政策…国家が主体で行う。

 

国が行う経済活動の収支についての活動であり、

最も有名な例でいうと公共事業を行うことです。

 

一本目の矢ー金融政策ー


金融政策の仕組みを一挙紹介!

金融政策には主に3つの方法があり、

  1. 公定歩合の変更
     
  2. 公開市場操作
     
  3. 支払準備率操作

です。

 

全部をまとめた図が上図になります。

 

今回のアベノミクスでは主に2の影響が強いので

2の公開市場操作について主に説明をしたいと思います。

 

ちなみに1の公定歩合の変更とは、

市中銀行(私たちが預金するいわゆる一般の銀行)が

日本銀行からお金を借りる時の利子の変更のことであり、

この公定歩合を下げると資金供給が増えて景気を刺激し、

逆にあげると資金供給が減り景気を抑制します。

 

3の支払準備率について、

まず「支払準備率」とは

金融機関(先ほどとりあげた市中銀行)が受け入れた預金のうち

何%を日銀に預け入れるかという割合です。

 

支払準備率が上昇すれば

市中銀行が日銀に預けるお金の量が増えるため

世の中に出回るお金の量は少なくなり、

逆に支払準備率が低下した場合には

世の中に出回るお金の量は多くなります。

 

公開市場操作とは、

日本銀行が市場で国債や手形を売買することで

市場にお金を供給したり、

回収したりすることを言います。

 

今回のアベノミクスでよく

「日銀が政府の発行する国債の約7割を購入し...」

といったことが聞かれます。

 

これは国債を日銀が買うことによって

その分お金が市場に流れます。

 

お金は貸したい側と借りたい側の二者がいるので、

増えた分のお金を貸し付けるために

お金を借りるためのコスト(金利)を

下げることになります。

 

するとお金を借りたい側(例えば企業)が

お金を借りて新たな生産活動を行うことになるため

雇用が増加し景気がよくなるという流れです。

 

二本目の矢ー財政政策ー

 

財政政策は先ほど説明したように、

国が行う経済活動の収支についての活動です。

 

こちらは政府が積極的に需要を拡大することで

需要拡大→企業の業績向上→雇用の増加→需要の拡大→...

という好循環を生み出すことで

景気の回復を図るものです。

 

アベノミクスでもこの効果を狙っていて、

2013年1月政府の閣議決定で

緊急経済対策10.3兆円の政府支出を決定しています。

 

このように財政政策と金融政策を組み合わせることを、

教科書に出てくる言葉でいうと

「ポリシーミックス」となります。

 

少し話が難しくなりますが

なぜこのようにポリシーミックスを実行するかというと、

もし財政政策のみを行うと

「クラウディングアウト」という現象が発生し

利子率が上昇してしまうので

他の一般の資金の借り手にとっては

ますます資金調達が難しくなってしまうという事情があります。

 

三本目の矢ー民間投資を喚起する成長戦略ー(※おまけ)

 

ここからはあまり科目の指導については

役に立たないのでおまけです。

 

興味のある生徒さんには

紹介してあげてもよいかもしれません。

 

ではいったいなぜアベノミクスは

三本目の矢を目標に掲げているのでしょうか?

 

今までに説明してきた二本の矢で十分に思えます。

 

しかし、この3本目の矢がうまくいかなければ

日本は最悪の場合財政破綻になりかねません。

 

重要なのは2点あります。

  1. 「資金供給を増やすと利子率が低下」というのは実は短期的に見たときの話であること
     
  2. 1本目の矢、2本目の矢によって"日本が借金を拡大させ続けているということ"

 

まず1に関して。

大学の授業で習いますが、

名目利子率=期待インフレ率+実質利子率となります。

 

先ほどの「資金供給を増やすと利子率が低下」というのは

物価が短期的には硬直的(動きづらい)という前提に即しています。

 

実は長期的に見ると

利子率(名目利子率と考えて構いません)は上昇するのです。

 

そんな中、3本目の矢である

中長期的な民間投資の促進が失敗すると

税収も増えず利子率も上昇しているということになって

国債の価格が大暴落します。

 

すると日本は国債を発行しても資金を調達できず、

2からわかるように日本は借金を増やし続けているので

借金が返済できず破綻となってしまいます。

 

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