ここでは、中学生英語の個別指導を、120分の時間で行うことを前提に授業カリキュラムを組んでいます。
実際の中学生の個別指導の現場では、個別指導の講師にはさまざまな科目の補習を頼まれる場合が多く、120分ずっと一つの科目の指導をするという状況は少ない場合が多いです。
その場合は、適宜生徒の希望に応じて毎回わからないところの解説を行えば良い、という、講師としてはカリキュラムをハンドリングする必要のない楽な状況です。
一方で、保護者、生徒から120分授業を全部使って、みっちり苦手科目の指導をして欲しいと頼まれる場合もあるでしょう。
経験の少ない新人講師だと、すべてを講師に任された場合、何をどこから始めたらいいのかがわからなくなってしまう場合もあるかもしれません。
そんなとき、ここで紹介した指導カリキュラムのサンプルが、授業計画の参考になればと思います。
中学生英語の指導は、教科書が超重要!
小学生時代に英語教室に通ったり、海外旅行に行ったりして英会話が得意だったとしても、中学生になった途端に、英語の成績がとても低くなってしまって驚く生徒はたくさんいます。
中学一年生の最初のうちだけは、英語に親しんでいる、という程度で良い成績を取ることができます。
しかし、中学一年生の後半以降になると、中学英語は、適切な定期テスト対策を行わないと、良い成績を取ることができません。
英語中心の家庭教師、個人指導を依頼された場合、講師は、本人の英語力と英語の定期テストで良い成績を取る力は、別物だ、という事実を踏まえて、指導をしなくてはいけません。
中学英語に一番必要なことは、何はなくとも教科書に即した定期テスト対策を行うことです。
教科書に即した定期テスト対策を行っていない場合は、たとえ、英語教室でバイリンガルに近い発音で会話ができる生徒であっても、テストの得点には結びつきません。
では、中学英語の成績が確実に上がる指導方法とは、どのようなものなのでしょうか?
以下に、一例を紹介します。
ちなみに今回紹介しているのは、公立中学校や、書店で教科書ワークが購入できるオーソドックスな教科書を使用する私立中学校の定期テスト対策です。
プログレスや学校独自のテキストを使用するタイプの私立中学校の定期テスト対策には直結していないかもしれませんが、参考にしてみてください。
まずは、ノート片面に教科書の英文を写す。ノートはぜいたくに、すっきりと使う!
中学英語の指導をするとき、私は、まずは、ウォーミングアップとしてノートの見開き片面、左側の面に、教科書の英文を写してもらいます。
改行のたびに、一行空行を空けるように言います。
が、その部分にあとで和訳を書いたりはしません。
あくまでも、レイアウト的にきれいなノートを作るための指導です。
家庭教師、個別指導の生徒はモチベーションの低い生徒が多いので、中学生のうちは判読すら危うい汚い字でアルファベットを書く生徒もいます。(特に中学生男子にはその傾向が高いです)
そんな生徒に、まずはこのノート作りで、勉強の基本である「きれいなまとめノートを作る」ことを教えましょう。
この時間は5~10分です。
授業を始めたばかりで頭が英語モードになっていない生徒の、ウォーミングアップとして使用しますが、慣れてきたら、宿題に出してもいいかもしれません。
次に、生徒のノートを使って一緒に教科書を読んでいきます。講師が英文を読んで、直後に生徒に真似して読んでもらいます。
次のステップでは、生徒が教科書を書き写したノートを使って、一緒に英文を読んでいきます。
これから先は、教科書の代わりに生徒のノートを使用します。
講師が英文を読み、直後に続いて生徒に講師のまねをして読んでもらいます。
この時点では、私は、生徒が知らない単語を辞書で調べたりという作業は後回しにして、まずは読み方を学んでもらいました。
また、このとき講師が気をつけなくてはいけないのは、ネイティブのように流暢に読むことよりも、生徒が英語の読み方をしっかり理解できる明瞭な読み方を示す、ということです。
ネイティブの発音のできる講師は、生徒には尊敬されます。
しかし、あとに続いて読まなくてはいけない状況では、生徒にとって講師の流暢すぎる発音を聞き取ることがストレスになってしまう場合があります。
私は、このとき、どこからどう聞いても日本人が英語をしゃべっている、という感じの平坦な発音で、はっきりとわかりやすく英語の読みを伝えるようにしていました。
理由は、中学生の段階では、スペルを覚える際に、心の中で読み方を唱えながら覚えている生徒が多いからです。
また、講師の発音が平坦ならば、自分が下手な発音で後に続いて読んでも恥ずかしくない、と思ってくれる状況もあります。
もちろん、講師が「発音が悪い先生」と思われてしまってはいけないので、生徒のレベルや性格に応じて対応しなくてはいけません。
適度に調整しつつ、試してみてください。
一文ずつ、講師が適切な訳を伝えていきます。生徒には、「直後にもう一度聞くよ!」と警告しておいてください。
最後まで英文を読み終わったら、今度は、講師が一文ずつ日本語訳を教えていきます。
生徒が知らないはずの単語や構文などが残っていますが、講師側は知識を自由に駆使して、完璧な日本語訳を教えてしまって大丈夫です。
和訳をするときのスピードは限りなくゆっくり、何度もじっくり読み上げてあげるといいでしょう。
その際に、生徒には、「この和訳は、直後に自分で書いてもらうよ!」と伝えておきます。
つまり、講師が和訳をしている最中は、ペンを持たずに、聞くことに集中してもらいます。
それによって、生徒は、目の前で読み上げられる訳をひたすら写しているときよりも、講師の和訳をずっと真剣に聞いてくれるようになるでしょう。
ノートの見開き右側に、自分で和訳を書き出そう!
講師の解説が終わったら、ノートの見開き右側に、直前に講師が和訳したばかりの文章を自分で再現してもらいます。
左側の英文に対応して右側に、和訳を書く、という形式です。
ほとんどの生徒が短期記憶を駆使して頭の回転が速くなっている状態のはずなので、この和訳も5~10分ぐらいで終わるはずです。
それが終わったら、講師が、生徒の書いた和訳に赤ペンで添削をします。
この段階では、生徒はほとんど自分で英文を読みこなせていないので、丸々一文が記憶から抜けてしまっていたり、ひどい場合は一行間違えていたりと散々の可能性もありますが、講師は根気よく添削を行ってあげてください。
ここまでノートが完成して、初めて単語と文法の解説が始まります。
ここまでで、生徒のノートは、見開きで左側に英文、右側に講師の添削済みの和訳が載っている状態のものが出来上がりました。
そこまでできてから初めて、生徒の知らない単語や文法の解説を行います。
この段階で、生徒は、だいたいどんな内容の文章を読んでいるのかが嫌でもわかっています。
その状況を作ることで、知らない単語の大まかな意味を推測しやすくなります。
まずは、ノートの見開き左側の英文の中で、知らなかった単語を蛍光ペンでチェックしてもらいます。
そして、自分の和訳を確認しながら、だいたいの意味を予想してもらいます。
予想が終わったら、実際に辞書で意味を調べ、ノートの見開き右側に、単語と調べた意味を書きます。
この際は、ノートの見開き右側でしたらどこに書いても構いません。
生徒のやりやすいレイアウトで良いと思います。
文法事項の説明は、その単元で学ぶ文法事項をまとめたワークなどと併設して解説していきます。
中学英語の教科書本文を使って文法事項を説明しても、生徒はいまいちよくわからない場合があります。
文法は文法でしっかりとまとまって、問題演習もできる文法ワークなどの存在が不可欠です。
文法を教える際は、必ず実際に手を動かしての演習が必要、と思っておくと良いでしょう。
最後に、宿題です。ノートの右側を隠して右側を書く。→ノートの左側を隠して左側を書く。
最後に、宿題の出し方を紹介します。
英語の宿題の出し方は、2ステップになります。
まず1ステップ目は、ノートの右側(和訳)を隠して、左側の英文を見ただけで和訳がすべて書けるように練習します。
これは、宿題チェックの際にチェックテストを行ってください。
和訳の場合は、時間短縮のため、口頭でのチェックテストでも構いません。
ただ、口頭のチェックテストの場合は文法を無視して意訳だけで伝えようとしてくる場合もあるので、必ず講師は「文法事項がきちんと理解できていると、採点者に伝えるための和訳」の作り方を指導するようにしてください。
2ステップ目は、ノートの左側(英文)を隠して、右側の和訳を見ただけで英文を書けるようにすることです。
これは、生徒にとってとても労力を使う大変な暗記作業ですが、これができていると、そのまま定期テストの得点に直結します。
この暗記では、イディオムや重要単語など、すべて網羅できます。
中学英語の定期テストで出題される内容は、「単語・イディオム」と、「文法演習」の二つの要素です。
この教科書暗記の2ステップ目が終わっていれば、「単語・イディオム」は、確実な得点がのぞめるので、成績は一気に上がるようになるでしょう。
宿題として出すにはモチベーションが低いと感じられる生徒には、授業時間を使ってつきっきりででも、この教科書暗記は必ずやらせるようにするといいと思います。
いかがでしたか?
中学英語は、とにかく「教科書対策」が必要な科目です。
コツをつかんだ授業をすることで、生徒の苦手意識を払拭するような、定期テストの点数に直結する指導のできる講師になれるよう、応援しています。