はじめに
中学生がもっとも苦手とする英文法事項「分詞」。僕も中学校や高校の教壇に立って教えていたときは、どのように教えたらよいのかわからずに悩んでいたことがありました。
今回は生徒に「分詞」を理解してもらうためのノウハウを紹介したいと思います!
「分詞」を教える前に
塾だけでなく学校でも、いきなり「現在分詞」や「過去分詞」を教え、「分詞」の説明を始める先生も多いです。しかし、それは英語が得意な人の目線であり、たぶん生徒たちは混乱してしまいます。ですから、英語で分詞を教える前にまずは、日本語で考えさせて納得させてあげましょう。
「分詞」のポイント
まず始めに強調しておきたいポイントは、「基準を明確にする」ということ。生徒にヴィジュアルで考えさせるために、近くにあるものを手にとって見せます。
僕の場合、たまたま近くにあった本を手にとって開いてみました。
「僕を基準」に考えると、「開いている」ことが想像できます。僕の気持ちになって考えることが大事です。「僕=開いている」ことがわかります。
今度は逆に本に気持ちになってみましょう。「本を基準に考える」と、「開かれている」ということがわかります。つまり、「本=開かれている」という受け身の状態であります。
「分詞」を教える前に強調すべきポイントは2つ!
・何(だれ)の気持ちになって考えるか。(※ 基準を明確にする!)
・「している」のか、「されている」のか。
その基準から考えて「している」「されている」の関係がわかるまでは、生徒の混乱を避けるためにも次へ進まないほうがよいでしょう。
「分詞」の準備
僕が高校生だったとき、「過去分詞」という文法用語は知っていましたが、「現在分詞」という用語を知ったのは高3のときでした。「現在分詞」「過去分詞」と言われてもわからない生徒は思っている以上に多いのが現状です。
先ほど書いたように、「している」「されている」の関係がわかるようになったら、今度は”~ing”と”~ed”を使って説明しましょう。
「~している」 → ~ing
「~されている」→ ~ed
複雑な文法事項ほど、かんたんな英単語を使うように心がけるようにしたほうが理解しやすいです。「複雑な文法事項」と「難しい進出単語」のWアタックは生徒を撃沈させてしまいます。生徒の覚える負担を考え、最初はできるだけかんたんな英単語を使って指導しましょう。
生徒が理解しやすい動詞の例
・use(使う)→using、used
・love(愛している)→loving、loved
・call(呼ぶ)→calling、called
「分詞」の基礎
「分詞」とは何か? それは「名詞をくわしくするモノ」なのです。難しい文法用語でいうと、「名詞を修飾するモノ」なんていいます。
たとえば、駅に行って一緒にいるともだちに「お~! あの女の子、かわいい!」といったとします。人が大勢いたら、「どの女の子だよ~?!」っていう話になります。
「ほらほら、赤いカバン持ってる女の子!」とか…、「あのドアの前に立っている女の子!」と、くわしく説明すると思います。
「赤いカバンを持っている女の子」
「ドアの前に立っている女の子」
…というように、下線で引いた部分が女の子についてのくわしい説明であり、その部分が「分詞」で表す表現になります。
上記のように「~している」という表現であれば”~ing”、「壁ドンされた女の子」のように「~された」であれば”~ed”を使うということをはっきり区別させましょう。
身近な素材で導入
塾や学校の英語教師でもっとも尊敬されるのは、アドリブ。生徒の難しい英語の質問に答えたり…といったその場のスマートな対応が生徒を感動させ、それが生徒を引きつけます。恐ろしいことに、生徒たちはその対応力で英語教師の技量を判断してしまうのです。
それを踏まえた場合、一番効果的な導入は生徒を話題に出すことです。
たとえば、「この中でダンスする人~?」「ハイ、ダンス好きな人は手を挙げて!」といって、対象の生徒に手を挙げさせます。仮にそれがサキコちゃんという女の子だとします。
はい、サキコちゃんは「かわいい女の子」です。
これを英訳してみましょう!
といって、近くにいる生徒を指します。
すると生徒は下記のように答えると思います…。
Sakiko is a cute girl. または、Sakiko is a pretty girl.
では、今度は「かわいい女の子」を「踊っている女の子」にさせます。すると、「~している」「~されている」の関係が理解できている生徒たちはかんたんに書き換えることができます。
a cute girl → a dancing girl
「かわいい」に「踊っている」になっていることがわかります!
分詞の基礎
苦手な生徒にとって、「分詞」はとても混乱しやすいところです。わかりやすくボードにまとめてあげましょう。
現在分詞
~している 名 詞 ~ing 名 詞
踊っている女の子 dancing girl
過去分詞
~された 名 詞 ~ed 名 詞
使われた車 used car
ある程度基礎ができている生徒は「~ed」ではない不規則動詞あることを理解しています。学習に遅れがある生徒の場合は、「不規則動詞」と言われてもさっぱりわかりません。そのため、「~ed」というまとめ方をしています。
苦手な生徒には、「中には~edではない例外の過去分詞がある」「その例外を専門用語で不規則動詞って呼ぶんだよ」とかんたんに説明するのがよいでしょう。
分詞の応用
先ほど、「踊っている女の子」で分詞の基礎をやりました。
今度はこのような質問をします。
英語で「ヒップホップを踊る」というのを
”dance hip-hop”といいます!
では、「ヒップホップを踊っている女の子」を
英語で何といったらよいでしょう~?
すると次のような解答が出てくることが予想されます。
dancing hip-hop girl?
dancing girl hip-hop?
「さあ、どっちだ?!」といって生徒に尋ね、手を挙げさせてもおもしろいですね。「実はどちらでもないんだよ。」といってボードに書きます。
girl dancing hip-hop
※2語以上はうしろに置く
塾や学校の先生でも、前修飾とうしろ修飾をさらっと流してしまいます。ですから、ポイントを強調して、ひとつひとつのステップをゆっくり進めましょう。
分詞のポイント
生徒が理解しやすいように板書をします。見やすくするために3パートに分けて書いてあげます。現在分詞と過去分詞が横に揃うように気をつけましょう。
【板書左】
現在分詞
~している 名 詞
~ing 名 詞
過去分詞
~された 名 詞
~ed 名 詞
【板書中央】
踊っている女の子
dancing girl
使われた車
used car
【板書右】
ヒップホップを踊っている女の子
girl dancing hip-hop
タケトくんによって使われた車
car used by Taketo
※ 2語以上はうしろに!
「ヒップホップを踊っている」という日本語からもわかるように、”dancing hip-hop”はセットです。”dancing girl hip-hop”としてしまうと、「ヒップホップ」と「踊っている」が切り離されてしまいます。ですから、修飾部分が2語以上になる場合には、わかりやすくするために名詞のうしろに置くのがルールです。
分詞を使った英文
「分詞」の構造が理解できたところで、今度は英訳で文の構造を指導しましょう。
例題
1.The dancing girl is Sakiko.
2.Mr. Baba is a teacher teaching math.
3.Miki is a girl studying kanjis.
分詞の指導で特に注意したいところは、できるだけかんたんな単語を並べてあげることです。たとえば、”She is a girl dancing in the hall.”のようにhall(ホール)という慣れない単語が出てくると、教師が想定していないところで「穴の”hole”?」と生徒が混乱したりすることが多いです。分詞以外での疑問が生じないように、できるだけかんたんな単語を使いましょう。
まぎらわしい分詞
「わくわくする」という英単語には”exciting”と”excited”があります。語法が難しくわかりにくいことから、大学入試の選択問題にもよく登場します。では、実際に出題された選択問題を見てみましょう。
例題
Making movies is an ( ) job. (亜細亜大改)
① excited ② exciting ③ excite
まず、最初に指導しなくてはいけないことは、“excite”という単語は「わくわくさせる」という意味であることです。それを分詞にして考えてみましょう。
現在分詞”exciting”は「わくわくさせている」、過去分詞”excited”は「わくわくさせられている」という意味であることがわかります。ということで正解は②になります。
自分の生徒が英語嫌いの場合は、「モノにはexciting」「ヒトにはexcited」と教えましょう。”interesting”や”interested”のような問題にも応用ができます。
「モノには~ing」「ヒトには~ed」の例
1.excite(興奮させる、わくわくさせる)
The soccer game was exciting.
サッカーの試合は興奮しました。
He is excited now!
彼は今興奮しています。
2.interest(興味を与える)
English is interesting.
英語はおもしろい。
I’m interested in Japanese culture.
日本の文化はおもしろい。
3.bore(退屈させる)
The concert was boring.
そのコンサートは退屈だった。
I was bored yesterday.
昨日は退屈だった。
最後に
ここ近年、かんたんな英語表現を使った「どの国の人にも誤解がない英語」が、世界のビジネスシーンで好まれる傾向にあります。その英語は”Globish(グロービッシュ)”と呼ばれ、国際人として活躍するための必須条件ともいわれています。動詞の時制を変え、動詞を形容詞的に使う上でとても重要な「分詞」は、自分の知っている単語力を”Globish”にしてくれる英語表現です。ぜひ極めてみてはいかがでしょうか?