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【社会化講師必見】わかりやすい公民分野指導法~税金の仕組み①~【中学社会】

中学生

2021/12/17

税金の仕組みをどう伝えるか

中学校社会公民の中でも経済分野は、とても奥が深い分野です。
1つ1つの言葉自体は中学生の生徒にとってなじみのある言葉でも、意外とその内実については
詳しく知らないという知識がたくさんあるからです。

税

これは学ぶ側の中学生に限ったことではなく、我々講師陣、もっと言えば社会人にとっても
意外と自明のように思える経済用語というのはたくさんあります。

たとえば、買い物をしたことがある人なら誰しも納めたことのある「消費税」であったり、
自動車税というのは国に払っている税金なのか自治体に払っている税金なのか、
その方向わけの基準は何か、など細かく知っている方はなかなか少ないのではないでしょうか。

政治というのは、このように国民から集めた税金をもとにして、警察を設置して治安を取り締まる、
教育に予算を割いて学力をあげるなど、

国民からの税金をいかに最適に配分するか

を議論しているわけです。なので政治と税金というのは切っても切り離せない重要なものなのです。

本稿では、この税金の授業で
①生徒の目線でいかに理解させるか
②魅力的な教材の用い方

の2点について、読んでいただいている講師の皆さんが考察できるような記事を執筆していきます。

税金とは何か

税金を納めることは、日本の3大義務の1つとされています。
(3大義務:①納税の義務②勤労の義務③教育を受けさせる義務)

よって、まずはなぜ、こうした税金が義務とされるほど重要なものなのか考えるところから授業を
初めて見てはいかがでしょうか。
筆者は、授業では初めに以下のような教材を提示していました。

税金

上記のような教材をパネル教材というのですが、社会科を教える講師の方には是非とも
こうした生徒の身近な生活経験にあるものを教材として利用することをおすすめします


教材そのものについては良ければ拙稿「社会科教材の底力」(URL:http://www.juku.st/info/entry/827)
をご参照ください。本稿でも、随所でこうした教材を提示します。

話を戻します。
この教材に載っているものから考えてみましょう。

何か犯罪が起こった時に駆けつけてくれる警察、そこを通る人は全員使うことになる道路、橋
火事が起こった時には、人命救助と延焼を防ぐために来てくれる消防士
これらを出動させたり、作ったりするときにお金は誰が払うでしょうか?
実は、ここに税金そのものの根本が隠されています。

税金というのは
コミュニティを維持していくために必要な経費
なのです。



もう少し具体化します。先ほどの道路の例で説明してみましょう。
まず、道路というのは日常生活の中でも最も重要な移動手段のための下地ですよね。
生徒の目線で言えば、塾にいくためにも友達と遊びに行くためにもこの道路が無ければ
そこへ行くことは出来ません。
これはもちろん生徒たちだけでなく日本中の人に同じことが言えます。

「使わない道のお金を払うのか」と思う子もいるかもしれませんが、例えば普段食材を買いに行く
スーパーで並んでいる食料品はどうやってきたのでしょうか?
農産物やお肉など、自分の住んでいる地元だけでなく、日本各地から「道路」を通って運ばれてきた
物ですよね。
このように、皆に取って利益があるのだから皆でお金を払って使おう(作ろう)じゃないか
これが税金を理解するための一番最初のステップです。

警察、消防、橋に関しても同じことが言えます。
塾講師の方を対象に書いているので、その他の例については講師の方の裁量にお任せいたします。
もし、こうした例で説明する際には、今述べた説明の仕方を参考にして
税金の根本的な考え方を指導していただけたらと思います。

税金と政治

さて、次に、授業において筆者は税金が政治とどう関わっているかということを説明をします。

国会

この税金というのは、もともとは国という概念が誕生する以前からありました。
それは国という大きな規模ではなく、「村」単位の規模から始まったとされています。

皆で出しあったお金なので、危険な動物が入らないようにバリケードを作る、落とし穴を作る
など、その使い道に関してはそれを出しあった人全員で話し合って決めていました。

ただ、これがどんどん規模が大きくなった場合はどうでしょうか。
1000人、もっと増えて10000人が一同に介して意見をぶつけあい、決定することは時間がいくらあっても
足りません。

そこで、ある一定以上の規模になってしまったら「代表者」に話し合いをして決めてもらおう。
となります。ここまで説明したら生徒も、講師が何を言いたいかうすうす感づいているかもしれません。
この「代表者」が現代で言う「政治家」です。

投票

このように、選挙というのは税金の面から見れば、
自分たちが払ったお金を皆の利益になるもののために最善の使い道を選択できる人を選ぶもの。
ということです。

昨今、投票率の低下が問題になっています。なので、税金を教える際にはこうした政治との関わり、
選挙の重要性も関連して指導してあげられると良いですね。
もちろん、投票は権利であって義務ではないので強制するような言い方はしないよう注意しましょう。

大きな政府と小さな政府

さて、それではこの税金の使い方にはどのようなタイプがあるのでしょうか。
主によく使われる言葉として、「大きな政府」と「小さな政府」の2種類があります。
まずは以下の教材をご参照ください。

大きな政府、小さな政府を説明する際には、この2点を中心に考えていけばその枠組みがつかめます。
この2つの大小は、言い換えれば1つのコミュニティをどのくらいの大きさにして、どの程度拘束力を
もつものにするかというものです。

つまり、具体的にいうと
「大きな政府」とは、出来る限りコミュニティを大きなものにして、その分拘束力も大きくします。
国民から税金を出来るだけ集め、その税金をもとに教育、福祉などの公共サービスを充実させることで、
国民全体の生活水準を上げるという事を目指します。

一方、
「小さな政府」とは、この反対で、出来る限り1つ1つのコミュニティを小さくします。
例えば自治体などの行政区分がこれにあてはまります。
国からの公共サービスは手薄になりますが、その分税金も安くなります。
つまり、自治ができる代わりに、何かあった時も自分たちで守っていかなければならない、という事です。

天秤

これら2つは、もちろんどちらが良いという事はありません。
大きな政府にすれば、国が面倒をみる代わりに民間企業の成長が止まってしまうというデメリット
もありますし、小さな政府にすればもともと経済力がある地域とない地域で格差が広がってしまいます。
大切なのはこの2つのバランスを有権者が見極めていく、という事ですね。

まとめ~税金が社会に与える影響~

本稿では、税金と政治が密接に関わっているという事を、「選挙」と「大きな・小さな政府」の2点から
説明する方法を書いてきましたがいかがだったでしょうか?

1つ1つ丁寧にその内実を説明してきたのは実は理由があります。
本稿では最後にそのことに触れたいと思います。

税金は、社会に大きな影響を与えます。
例えば、京都に修学旅行などで行った経験がある方はわかると思うのですが、
京都のお店や家というのは非常に入口がせまく、奥行きのある家、店舗が非常に多いと感じた事は
ないでしょうか?

家

実は昔京都では、道路に面した部分の長さがその家に課税される基準となっていたのです。
つまり、家の入り口側が道路に面する長さが長いほど高い税金を納めなければならない、という事です。

こうすると、当然購入者としては、家の道路に面する長さを短くするような設計にして、
税金を安くしたい、と思いますよね。

その名残があるから、あのように入口は狭いけれど奥行きがある、という京都独特の景観に
なったのです。

このように、税金というのは社会に与える影響が非常に強いという事も生徒たちに説明する際には
伝えると、より学ぶ意義が見えてくるかもしれませんね。

もしよかったら参考にしてみてください。以上です。
皆さんのご活躍をお祈りしています。ここまで長文ご精読ありがとうございました!
次回は、税金の中身の指導法をご紹介します。

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