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中学校社会公民分野指導法~税金の仕組み②~

中学生

2021/12/17

税の中身

前記事「中学校社会公民分野指導法~税金の仕組み①~」では、税金の根本的な考え方、
税金と政治の関係、そして税金の使い方による政府の形態は2種類あるという内容の指導法を
ご紹介しました。

財布

本稿から読んでいただいている方もいると思うので、簡単におさらいをします。
税金とは、皆が使うものを作ったり、修理したり、維持するための費用を
皆で負担しようということが、その根底部分にあります。

税金を多く取る代わりに、公共サービスを充実させるのが大きな政府
税金の負担を減らす代わりに、公共サービスは減るのが小さな政府
という部分まで説明いたしました。

こうした税金の根本的な考え方がわかったら次は、その具体的な税の種類の説明へと続きます。
ここも国の政治と大きく関わっていくところなので1つ1つ丁寧な指導が求められてきます。

本稿では前稿に引き続き

①生徒にとってわかりやすい税金の指導法

②魅力的な教材の用い方

の2点について読んでいただいている講師の方の参考になるような記事にしていきたいと思います。

税金の種類

まずは、税金の種類です。
税金は、所得税、たばこ税、酒税など様々な種類があるのですが、
今現在日本が定めている税金には2つの種類があります。

税金

それが、直接税と消費税ですね。どちらも公に支払うという点では同じなのですが、何故税金には
2種類あって、それをわけているのでしょうか?
この2つの特徴を説明する際にはこうした問いかけから入ると生徒も興味がわきやすいと思います。
ここから2つの税の具体的な指導法をご紹介します。

直接税

 まずは直接税から中身を確認しましょう。
直接税とは、収入のあった人が直接税務署に収める税金の事を指しています。
もっと具体的に1個人で言えば、(民間)企業で働いて、もらった給料の中から納める税金のことです。
ここで言う「人」とは人間だけでなく、「法人」つまり民間企業も含まれています。

直

「法人」つまり企業が売上を好調に伸ばすことができれば、それだけ国、地域への税金も多く入ってくる
ということです。
例えば、愛知には日本の誇る有名な自動車メーカーがあります。
昨今、円安が進んで日本の輸出産業に有利な状況になっているので、そのメーカーは売上を伸ばして
いるのです。そうした景気の良い企業があることで、地方税としても税収が入るので
現在東海地方はかなり法人税によって潤っています。

また経済は、つまるところ生産、そして消費活動が活発になることを通して
世の中で「お金が循環している状態」を理想とします。

累進課税制度(また別記事で指導法をご紹介します)がある現在、高所得者の方に高い税金を納めることは
所得の再分配」ということになり、世の中にお金が回るための貢献をしてもらっているのです。
もちろん、あまりに高すぎると労働への意欲がなくなってしまうので、この線引は非常に難しいものである
ということも付け加えておきます。

この説明からもお分かりいただけるように、景気が良い時は税金を多く回収することが出来るので
政府はその資金を元に公共サービス等へとつなげることが出来ます。
しかし、その反面景気が悪い時には回収できる税金が減り、国全体の経済力が落ちてしまうことにも
つながるのです。まさに税収の表と裏ですね。

ここまで、説明すると、次のに説明する間接税との違いがより明確になります。

間接税

 次に間接税です。直接税が収入の合った人が直接税務署に税金を納めるのに対して、
間接税は税金を負担する人が直接納めない税金のことを指しています。

間接税

少し遠回しの表現なので具体化して説明いたします。
パネル教材を御覧ください。これらは代表例ですが、このように
お酒、ガソリン、タバコにはそれぞれ税金がかけられているのです。
これらの税金というのは、これらを買う消費者が購入する際に、税金の分も含めて
代金を支払います。

そうすると、代金としてタバコ税を回収した企業が、この税金分を国に支払う、結局
公の金庫へ行くという点では同じなのですが、間接的に税金を支払うということに間接税の特徴があります。

さて、大事なのはここからです。
この間接税にはどのようなメリット・デメリットが有るでしょうか。
まず、メリットとしてあげられるのが、一定の税率を課すことが出来、安定した税収が見込める
ということです。
今現在、日本の消費税は8%ですが、これを高所得者に対しては、40%消費税を課すというような
差別化はされていませんよね。

中学生に説明するなら、100円の飲み物を買うときに、人によって108円になったり、
140円になったりしないということを具体的な数字とともに伝えても良いかもしれません。

さて、それではデメリットを考えてみましょう。
これは、今説明したことのまさに裏側なのですが、所得が少ない人にとっては税金の負担が増す
ということです。

とても極端な例で置き換えてみます。
例えば月収10000円の人にとっての、税込価格540円(定価500円、消費税8%)の買い物と、
月収が1000000円の人にとっても、税込み価格540円(定価500円、消費税8%)というのは
同じ値段でも明らかに収入に対する負担の割合が違いますよね。

このように、低所得者にも高所得者と同じ消費税率を適用して良いのか、というのは実は
実は今でもしばしば議論が行われることなのです。
とはいえ、現実的に消費税を所得別に振り分けるのは現実的に厳しいことです。
スーパーのレジの人からすると買う人がどれだけの収入を得ているかなんて、皆目検討もつかないからです。

直間比率

 ここまで直接税と間接税の2つのメリット・デメリットについてご紹介してきました。
あまり、高校入試では問われないのですが、せっかく直接税と間接税の話をしたので、
授業では「直間比率」の話もするようにしています。

割合

「直間比率」とは、税金全体の中で、この2つの課している比率を指しています。
経済学の考えでは、基本的にこれは全体を10としたら、5:5ぐらいの割合が丁度良いとされています。
もちろん、国の経済状態や為替、消費税率によって絶えず変動しています。

ちなみに過去10年だと、日本は直:間=6:4ぐらいとされていました。
少し直接税が高いのではないか、と議論があります。
講師向けの記事なので少し解説を加えます。

例えば、企業に努めているサラリーマンであれば、「源泉徴収」といって、給料から直接税
を天引きされているので正確に税率分を回収することが出来ます。
しかし、これが個人の経営者や、農業をやっている人であると話は変わってきます。

様々な分野に進出して、多方面から利益を上げているとしたら、こういった人たちの
給料を正確に把握することが難しいという側面があるのです。
これが、「直接税」の厄介な部分であるということも理解しておくと、
講師の方がこの議論により敏感でいられると思ったので紹介させていただきました。

まとめ

ここまで、税金の具体的な中身として、直接税と間接税の2種類がある、ということをご紹介してきましたが
いかがだったでしょうか?

買い物などで、普段何気なく払っている税金にも、教材研究をしてみると
このような奥行きがあるというがお分かりいただけたかと思います。

報酬

税金について2つの記事を立てて指導法をご紹介してきましたが、生徒にとっても、税金を学ぶことで
感じて欲しいのはまさにこの部分なのです。

自分たちが後々払うことになる税金はどのようなものがあるのか、政治でちゃんと無駄なく使われているか。
税金の仕組みを学ぶということは、
生徒が将来主権者として国政を厳しく監視できるようになるためのトレーニングです。

公民分野は税金のみならず、制度面をなぞるだけの指導になってしまいがちであるという悩みを後輩
の講師からもよく聞いていたこともあり、このような記事を執筆させていただきました。

指導の参考になれたら幸いです。以上です。ここまで長文ご精読ありがとうございました。

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