方程式の重要性:なぜ大切か?
方程式という単語は大体の生徒が嫌いになってしまいます。小学生のころから「おっかないもんだ」と言われ続けびくびくしながら習ってみたら案の定厄介で、となればまあ仕方の無い事でしょうか。
しかし、実際に考えてみれば方程式は非常に単純な作りです(中学生の範囲は、ですが)。全てのプロセスを分解してみれば、何も特別な事も難しい事もやっていません。ただただ、四則演算が出来ればそれだけで回答できる物です。悪戯に不安を煽っている一部の大人たちの害が意識に刷り込まれているだけなのです。
この記事では一次方程式のあれこれについて書いていきます。方程式は実際問題大した事ないよ、と生徒達を安心させてあげられればと思います。
一次方程式の作り方
一次方程式で最も難しいのはこの段階です。問題文を読んで、方程式を組み立てる。これが出来れば何も問題は無く、逆にこれが出来ないと当たり前ですが解答などできる筈もありません。また、問題の出され方も多岐に渡る為、記事一つで「こうやればできるよ」などと軽々しくいう事も出来ません。しかし「頑張れ!」ではあまりにも投げっぱなしですし一番難しいところに触れないのは色々とアレなので、一つどのパターンにも対応できる考え方について書いていきましょう。
そもそも、方程式とはその式が成立するxを求める、というものです。式が成立するという事は、「=」が含まれているという事です。それが無いと式が成立するも何も無いですので。
という事は、問題文をしっかりと理解すればその中に「=で結ぶことが出来る物」があるのが方程式だという事です。
以上を踏まえて、まずは「方程式の問題文の作り方」のプロセスを書きます。
1. 問題文を読み、概要を把握する
(例 兄と弟が時間をずらして学校に行く。弟の方が早くに出るけど兄の方が早いから途中で追いつく。弟が出発して何分後に追いついたかを求める問題)
2. 問題文が何を比較している (イコールなのか)のかを探す
(例 兄が追い付いた時点での、兄が歩いた距離と弟が歩いた距離は同じ)
3. 何がxなのかを求める
(例 弟が歩いた時間がx)
4. 要素を式にする
(例 弟は時速60kmでx分だから60x、兄はその5分後に時速80kmだから80(x-5)だ)
5. 二つの要素をイコールで結ぶ
(例 60x = 80(x-5) だ)
やっているのはこれくらいです。文章にすると単純ですが、方程式で最も難しい段階ですのでこればかりは生徒に何度も経験をさせて慣れさせてください。教える際の視点は上記のもので大丈夫だと思います。
方程式の解き方
式を解く
式が作れればもうあとは何も難しい事はありません。先述の通り四則演算さえできればそのまま解答出来るものです。上で用いた式をそのまま流用して解いてみましょう。
式を書く
60x = 80(x–5)
( )がある場合、それを外す
60x=80x – 400
xの付いた項を左辺に移項してまとめる
60x-80x= – 400
xの無い項を右辺に移項してまとめる
今回は無いので省略
両辺をそれぞれ計算する
–20x = –400
計算して答えを出す
x = 20
――よって、20分後に追いついた。
これが方程式の解き方の基本です。方程式で躓く生徒の多くは、計算が出来ないわけではありません。今のプロセスを一つ一つ小分けにすればそれぞれに対して回答する事は出来る能力を持っています。ただ、どうすれば良いのかを理解できていないだけです。
だからこそ、このプロセスを理解する事が大切になります。暗記ではなく、理解です。このプロセスをそのまま丸暗記にすれば解けるようになるかもしれませんが、どこかを忘れたらもう解けなくなるという事になります。何故このような順序で解いていくのかを理解して忘れないようにする必要があります。
その理解は、順序をそのまま遡っていく事で理解できます。
プロセスの根拠
まずは最後の「計算して答えを出す」。
イコールで結ばれている式は両辺に同じ数を足したり引いたり、かけたり割ったりしてもそのイコールで結ばれた関係は崩れません。xに余計な係数がついているとどうしても暗算が苦手な生徒にとっては直接回答を出す事は難しいですし、ケアレスミスのきっかけにもなりますから、最後まで気を抜かず計算しましょう。
その手前、「xの無い項を右辺に移項してまとめる」と、「xの付いた項を左辺に移項してまとめる」の二つ。まず、これらは別に、xの付いた項を右辺に、付いてない項を左辺にまとめても問題はありません。計算は出来ますし、正しい答えを導く事も出来ます。数学上の通例でもありますし、基本的にその方が見易いというのが理由でしょうか。今後関数が出て来ると尚更、y=ax+bという形が身近になります。生徒や教師たるあなた方が何を言っても、通例である以上そのように記述しているものが殆どです。わざわざ違う覚え方をしてややこしくする必要はありません。
さて、この段階ではやっている事はただの加法と減法の移項です。先述の通り、イコールで結ばれている式は両辺に同じ数を足しても引いてもその関係は崩れません(それが移項のシステムです)から、それぞれの辺からxのあるなしを基準にして邪魔なものを互いに相手方に移項しましょう。
これは、この後の「掛け算割り算の移項」とも言える最後の計算をするためのプロセスです。手間が増える事はあっても減る事は殆ど無いので、最後のプロセスとここのプロセスとの順番が逆にならないようにしましょう。実際に逆でやろうとしている生徒がいたら、一旦やらせてみるのが一番だと思います。最後のプロセスは式が最大限に単純化されていた方が簡単です。
さてさらに手前のプロセスは「( )を外す」です。( )で括られた掛け算のやり方は大丈夫か、ここで再確認しましょう。( )が無い場合もありますので、その時は考える必要はありません。筆者が生徒の頃教わった際、「( )は最初に計算するってルールだったろ?」と言ってくださる先生がいたのですが、この後に行う意向は掛け算割り算を後に行います。あまり元来の計算ルールだから、というのは前面に出さない方が良いかなと思います。そのあたりは、生徒の理解度と併せて助言してください。もしそう聞かれても説明が出来るのであれば、そのような言い方でも問題ないでしょう(理由ですが、こちらの( )を外すのは一つの式の計算過程だから、それは式を解いているのと同じ。だから( )の計算は最優先されます。対して以降の順番が足し算から、もといどちらを先に行っても構わないのは、移項自体は計算の過程ではないからです。左辺と右辺にそれぞれ新たに数字を足したり掛けたりしているだけなので、式の計算過程ではなく、その為優先順位はありません。という事を分かりやすく説明するのはあまり簡単ではないと思います。混乱しかねないので、尋ねられない限りは伝えなくて良いでしょう。)
以上が、方程式の解き方と、そのプロセスを取るそれぞれの理由です。方程式がxを求める物だという事をしっかり認識していれば、あとはその目的に辿り着く為に必要な条件を揃えていくだけです。尤も、これらは何問か解いていけば自然に身に付くとさえ言える能力です。小難しくこうだからこうだからとやるよりも、人によってはやってみた方が早いでしょう。
初めに述べた事ですが、方程式で最も難しいのは方程式を作る事です。組み立てられなければ問題にもならないのですが、しかし難しいのです。ここで必要なのは数学の能力というよりは国語の能力ですね。読解力です。可能なら生徒には日ごろからの読書を勧められると良いでしょう。
まとめ
方程式は作るところが最大の山。読解力を身に付けて正しい式を組み立てられるように。
その解答プロセスはそれぞれに理由がある。経験を積んでどういう状態の式には何をしてあげれば答えに近づくのかを理解すること。
この二つが、方程式二大プロセス(作ること、解くこと)の基本的なアプローチです。今後難しくなっていく方程式ですから、基礎をしっかりと固めて次につなげていきましょう。
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