累乗を理解しよう
累乗を初めて習った時の感覚を覚えていますか? 筆者は「なんじゃそりゃ」でした。どうにも直感的ではなく、問題を解くことが出来ても身近なものにはなかなかならなかったのを覚えています。
さて、累乗ですが人によっては問題を解く事には困らないという人もいますが、はたまた人によってはなかなか対応できないという人もいますね。
本稿で扱うのは中学までで扱う累乗です。即ち、指数が自然数である場合です。その際の都合上0である場合を特別に扱います。高校以上の累乗についてはまた別の機会に。
累乗の基本
指数が正数
A^n = 1×A×A×A……
と、Aをn回掛け合わせた数を指します。教える時、教科書には初めの1を載せない事が多いようですが、指数を0にする時に新しく定義する必要は甚だ疑問です。最初から定義してしまいましょう。
つまり、nが正の数である限り、それが大きくなるに従ってA^nの絶対値は大きくなります。情報分野に進む人にはとても身近な二進数は正にA=2のケースです。余談ですが、2^10程度までは見てすぐ2を累乗していったものだと結びつくように出来ていると今後楽になるでしょう。また、九九の暗唱で9までの平方数は生徒さんも不安無く覚えている事と思いますが、中学数学では15まで、余裕があるなら20までは平方数の暗唱をできると今後楽になります。素因数分解などを行っていきますので。
指数が0
A^0 = 1
先に述べたように指数が正の数の時の公式にそのまま当てはめて問題ありません。Aを0回掛け合せますから、1しか残りません。0乗は0だと思い込まれがちですが、それは累乗の定義がA^n=A×A×A×……と認識されているからです。余計な間違いのもとでしかありませんので、1を忘れずに公式に入れてあげてください。
累乗の種類
さあ、ここから少し面倒な符号、()付の累乗の計算です。一つ一つ順を追って解説してあげてください。くれぐれも公式で終わらせませんように。
-A^n=-(A^n)
(-A)^n =(-A)×(-A)×……
上の式だけを見るとどうしても理解に辿り着かない生徒さんがいますが、そういう時はこの二つの式を一緒に提示しましょう。()によって括られて初めて、符号は一つに扱われます。でないと、小学校で習う様な引き算が出来なくなってしまいますからね。「何で?」と聞かれた場合には符号について下記のように話すと分かりやすいでしょう。
-A=-1×A
このように、-Aというのは省略形であり、()を付ける事で、「1つにまとめる」のです。ですから、まとめていない段階で指数を付けたら当然、その累乗はAにしかかかりませんね。
累乗の応用
累乗の累乗
さて、最後は()付の累乗です。これが一番暗記する事でミスを生みやすくなる範囲でしょうか。しかし、公式のように扱わずともここまでの累乗の計算が出来ていれば特に新しい事を覚える必要も無く理解できる範囲でもあります。公式は教えるのを最後に回しましょう。根拠が先です。
(A^n)^m = A^(nm)
これは公式です。何故こうなるのか、計算してみましょう。
ここでは簡単にするために、n=2,m=3として計算します。公式通りならA^6となる筈ですね。
(A×A)×(A×A)×(A×A)
この計算はそのまま()を外して、
A×A×A×A×A×A
となります。A^6で間違いありませんね。途中式で分かったように、(A^n)^mの計算は、「n回繰り返した掛け算をm回繰り返す」というものであり、だからこそ答えがA^(nm)となるのです。これを伝える事無く公式を教えてしまうと、それはまあ、忘れますよね。
累乗の四則演算
加法減法
次は、累乗を用いた式の計算です。指数までを含めて一つの文字として扱う事で、少し特殊な文字として計算に使う事ができます。基本的なルールはxやyと同じです。ここでは、その少し特殊な部分について解説します。
A^n+A^m
これは、これ以上Aのグループとして記号をまとめる事は困難です。それは、
(A×A×A) + (A×A)
の計算はこれ以上出来ないからです。つまり、使う文字が同じでも指数が違う場合は別の文字として扱うという事ですね。引き算も同様です。
※「A^n(1+A^(n-m))」という事が出来るように不可能ではありませんが、問題をより難解にしてしまうだけです。
乗法除法
次は、
A^n×A^m =A^(n+m)
の計算です。これは先程に類例がありました。同じようにばらばらにしてみれば一目瞭然です。
(A×A×A)×(A×A)
となり、その計算は、そのままA^5ですよね。掛け算は掛け算同士である限り優先順位は同一なので、このようになります。同様に、除法は
A^n÷A^m =A^(n-m)
となります。こちらも同じように一つ一つの要素をばらばらにすればすぐにわかりますので途中式は省略します。
即ち、乗法除法の場合には、指数が違っても文字が同じならば、同じグループの文字として計算を進める事ができる、という事です。これが指数を持つ数の計算で通常の文字式とは異なる点です。
累乗のまとめ
ここまで読んでいただければ分かると思いますが、全ての計算は一応公式があります。講師の皆さんも見覚えのあるものが並んでいたでしょう。しかしその全ては、初めの基本中の基本である公式一つ。
A^n = 1×A×A×A……
これさえ分かっていれば、不要ですらあります。あとはただひたすら、今までやってきた文字式の文字にこの式を当てはめて計算し直すだけで済む事なのです。十分に理解している生徒であるとか、回答にスピードが必要な受験生にでもなければ、これらの公式は不要だとも言えるでしょう。
記事ではAを使って話を進めましたが、実際に教える時には具体的な数字を適宜使えると良いでしょう。
運営部おすすめ記事
理系のあなたに!国語ってどうして勉強するか知ってますか?
【塾講師必見】国語の教え方はこれだ!そもそも国語って何を教えるの?