天体運動の授業:実況中継第2回!
(前回記事:【中学理科授業の実況中継でわかりやすく解説】天体編・日周運動の教え方!①)
テキストは概して、たくさんのことを一気に詰め込もうとしがちです。
理科はその傾向がありますが、天体の分野は特にそれが顕著です。そのため、「なんかごちゃごちゃしていてわかりにくい」と苦手意識を持つ生徒が多いようです。
というか、僕自身が、中学生の時は天体の分野は大の苦手でした。理科のその他の分野はみんな得意であったにもかかわらず、です。
理科を担当する際に、一番気にかかったのは「天体、教えられるのかな…?」という恐怖でした。初めて中3を担当し、天体分野に入ってしまったときは、授業前日に寝付けない、というほどではなかったですが、夜に星の夢を見ました(笑)。
さて、日周運動の続きです。
日周運動で、東の空、南の空、西の空の星の見かけの動きについて、このような図がどのテキストにも載っていると思います。
僕は、中学生の頃、この図の意味が全く理解できませんでした。仕方がないので丸暗記していました。でも、ちゃんと理屈で説明できるのです。
実況中継その4 東西南北の空での星の見え方
前提知識の確認と準備
日周運動は、地球以外の星が1日に1周回る運動のことだったね。
だから、太陽の動きも星の動きも両方とも日周運動である。
だから、太陽の動きが、他の星の動きと同じに考えればよいわけ。
(板書)日周運動=星の一日の動き=太陽の一日の星の動き
その上で、太陽の動きが板書図1の動きと同じであることを説明していきます。
このような配置の教室であるとしましょう。A4かB4の紙を4枚とマジックペン(ホワイトボードマーカー等でも可)、セロテープを用意します。
はい、黒板を北ということにするよ。
(黒板に「北」と書く。または紙に「北」と書いて貼る。)
じゃ、出入り口の方の方角は? →(生徒)「南!」
そうだね。
(「南」と書いた紙を貼る。)
では、東はどっち? →(生徒)「(黒板に向かって右!)」
(生徒が答えられないときは、駅の東口・西口、または日本列島での関東・関西を例にしてヒントを出す。)
そうだね。
(「東」と書いた紙を生徒に壁に貼ってもらう。同様のやり取りの後に「西」と書いた紙も。この時点で「何が始まるんだ?」と教室に少しワクワク感が漂い始めます。)
(教室の中央付近に椅子を置きます。)
東の空と西の空
この教室全体が天球ね。で、観測者がこの椅子にいると考えるわけ。
で、この椅子からみた太陽の動きを追いかけてみよう。
みんな、この椅子の位置から見たらどう見えるか、ということを考えて答えてくれ。
まず、この椅子から東の空を見てみよう。
(椅子を東の壁の方に向けて座る。)
東の空では太陽は昇るのか、沈むのか? →生徒「昇る!」
どの方向に向かって昇ってくの? →生徒「南!」
ここが大事なんだけど、この椅子の位置から東の空に向かって見ると、南の空は右なの左なの?
→生徒「右!」
すると、結局、東の空の太陽はどういうように動くかというと?
(上がるor下がる、右or左、と適宜誘導を入れて)
→生徒「右上がり!」
右上がりだよね。テキスト確認して。
西の空も同様です。
西の空では太陽は昇るのか、沈むのか? →生徒「沈む!」
どの方向から沈んでくの? →生徒「南!」
ここが大事なんだけど、この椅子の位置から西の空に向かって見ると、南の空は右なの左なの?
→生徒「左!」
すると、結局、西の空の太陽はどういうように動くかというと? →生徒「右下がり!」
右下がりだよね。テキスト確認して。
南の空と北の空
次に南の空です。
南の空はどうなるか。南の空では太陽は高い位置にあるよね。
太陽が一番高い位置にあるのを何というんだっけ? →生徒「南中!」
一番高いところが南中だね。南中しているときばかりでなく、南の空では太陽は高い位置にある。西や東のように上がったり下がったりはしない。
ただ、左右に動くんだね。
右から左に動くのか、左から右に動くのか。これが重要!
この椅子の位置から南の空を見る。
もう一度確認。太陽はどの方角から昇って、どの方角を通って、どの方角に沈むのか?
→生徒「東から昇って、南を通って、西に沈む!」
では、この椅子の位置から南の空を見たときに、東は右か左か?
→生徒「左!」
西は?
→生徒「右!」
ということは、南の空では左から右に動くように見えるわけだね。テキスト確認して。
次は北の空です。
しつこいけど、また確認するよ。太陽はどの方角から昇って、どの方角を通って、どの方角に沈むのか?
→生徒「東から昇って、南を通って、西に沈む!」
では、この椅子の位置から、東→南→西と指差すから見てて。
(で、南の方を向いた状態で、東→南→西、下を通ってまた東→南→西、と大きな円を描いて指差しながらぐるぐると回していきます。)
(回しながら、後ずさりしていきます。同時に円をだんだん小さくしていきます。で、黒板の「北」の文字の前で指をぐるぐる回します。このとき、講師は黒板を背にしている状態になります。)
太陽は東→南→西と動いて行った。その円を、向きを変えないでだんだん小さくしていくと、この動きになるね。
(と、その間、指は回しっぱなしです)。
椅子の位置から、北の空を見たとき、この指の動きは、時計回りか反時計回りかというと?
→生徒「反時計回り!」
そういうこと、テキスト確認して。
という感じで、説明します。
北極星
(ここは通常説明で)
ついでに、北の空の星は北極星を中心として回っているように見える。
北極星は、地球の地軸の延長線上にあるので動かないように見える。
このことは、できる子たち相手だと、簡単にすまして終わりなのですが、やはり具体的に示す方が入りがいいし、リアクションが良いです。
そこで、僕は自腹で、地球儀の模様の入ったビーチボールを購入し、説明に役立てています。
これは、天体の説明には何かと便利なのでおすすめです。アマゾンで1000円しないくらいの値段で買えます。ただ、夏期シーズンを外すと売っていなかったりするのでご注意を。
で、地球儀ビーチボールに棒を立てて(=地軸)、棒の先に何かをつけて(=北極星)回してみせます。
この時に注意するのは、地球の自転の方向です。
他の場所でも説明するのですが、「地球の自転の方向は北極から見て反時計回りだからねー」、ととりあえず言っておきます。ここまでで既に新しい事項がてんこ盛りになっているので、言うだけにとどめここではあまり説明はしなくてもいいと思います。
で、北極から見て反時計回り、九州→北海道の方向にくるくると回してみせます。
または、簡易には、地球儀ビーチボールの北極に、違う色のキャップをはめたマーカーを立てます。たとえば、黒のマーカーに赤のキャップをはめます。その上で、回してみせるというのもありです。これは棒を準備するのを忘れたときに活用します(笑)。
ここで、気が付く生徒もいるのですが、北の空の星の見かけの動きは反時計回り、地球の自転も反時計回り、同じじゃないかと。
この点について説明するのもありかと思います。
僕は、「そうなんだよね。ぶっちゃけ、この分野で時計回りか反時計回りか、って聞かれたら北半球の時は反時計回りなんだよね。」と言うことにしています。
日周運動の角度
日周運動で最後に確認するのは、1時間に何度動くのか、という問題です。
(板書)日周運動=1日1周する運動
1日は何時間? →生徒「24時間!」
じゃ、1周は何度? →生徒「360度!」
24時間で360度だったら、1時間で何度かな? →生徒「360÷24=15 で15度!」
(ここら辺はスムーズに行くと思います。場合によっては、この「15度」という数字は覚えさせてしまうと良いかもしれません。)
おさらい
日周運動とは? 太陽や星が1日に1周するように見える運動のこと
東の空の星の日周運動はどのように見えるか? 右上がりに見える。
西の空の星の日周運動はどのように見えるか? 右下がりに見える。
南の空の星の日周運動はどのように見えるか? 左から右に横に動くように見える。
北の空の星の日周運動はどのように見えるか? 反時計回りに動くように見える。
北の空の星の日周運動の中心は何か? 北極星
なぜ北極星は動かないように見えるのか? 地軸の延長線上にあるから
日周運動は、1時間で何度動くように見えるか? 1時間で15度
この後、確認問題を一気にやりましょう。
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